TAM・SAM・SOMとは?計算方法や設定のコツをまとめて解説

2021.12.20
TAM・SAM・SOMとは?計算方法や設定のコツをまとめて解説

「TAMという言葉を聞いたことはあるけど具体的な意味は分からない」、「なぜ新規事業の立ち上げに「TAM」が重要とされるのか知りたい」という方も多いでしょう。

 

ここでは、TAMとは何か、SAMやSOMとの違い、TAM・SAM・SOMの計算方法などを解説していきます。ぜひ参考にしてみてください。

新規事業の立ち上げに必要なTAM・SAM・SOMとは

TAM・SAM・SOMは新規事業の立ち上げやスタートアップ企業にとって必要なものとされていますが、それはなぜなのでしょうか。

 

ここでは、TAM・SAM・SOMについて、それぞれ解説していきます。また、3つと比べると使用される頻度は少ないですが、PAMが使用されるケースもあるので、PAMとはどのような意味なのかについても一緒に見ていきましょう。

TAM(Total Addressable Market)

TAMは、Total Addressable Market、つまり実現可能な最大の市場規模のことです。企業側が新規に立ち上げたサービスや商品などを使ってリーチできるターゲット層の最大の大きさ、サービスの需要の大きさを表します。

 

サービスや事業を立ち上げる際、そのサービス内容を必要としている顧客が最大でどの程度いるのかを把握するために使用されるケースが多い傾向です。企業はTAMの数値を目安にして事業を拡大させることによって、サービスの需要を拡大させて顧客層を増やします。

 

ただ、TAM が大きければ大きいほどいいというわけではありません。市場が大きいというのは、同時に競争が激しいレッドオーシャンな市場という意味でもあります。勝負できる市場やマーケットを選ぶことが大切です。

SAM(Serviceable Available Market)

TAMの中で、実際に顧客としてアプローチできるターゲット層のことをSAMといいます。

 

TAMは企業側がリーチできる最大規模のターゲット層を指しますが、実際にはビジネスの競合相手や企業側が提供するサービス内容にマッチングしないターゲット層が存在するため、サービス内容を使ってアプローチできる層はそこまで多くありません。

 

しかし、SAMは自社で提供しているサービスが具体的にマッチする層を指すので、ターゲット層をより明確化できます。

 

SOM(Serviceable Obtainable Market)

 

SOMは少し特殊で、場合によって以下の2種類の意味合いで使用されます。

 

  • Serviceable Obtainable Market
  • Share of Market 

 

Serviceable Obtainable Marketは、自社が実際に獲得できる顧客層や市場のことを指す言葉です。SAMが実際にサービスを使ってアプローチできる顧客層を表すのに対して、SOMは自社のサービスを限定的に利用する顧客層を指します。

 

Share of Marketは、実際に自分の会社が獲得できている利益を表す言葉です。売上高やGMVのことを表しており、PMやPenetrated Marketと呼ばれるケースもあります。

PAMが必要になるケースも

TAM・SAM・SOMの他にも、PAMという指標もあります。PAMはPotential Available Marketの略で、他の3つの指標と比べると使用頻度は低いです。

 

今現在はターゲット層として認識されていないが、潜在的に販売可能な層として存在しており、将来的にターゲット層としてアプローチできる可能性がある市場を指します。

 

新規に立ち上げられた事業やサービスが一定のところまで成長すると、今度は既存の顧客層だけでは収益を生み出すのに限界が見えてきてしまうでしょう。そのため、既存の顧客層以外にも、新規にアプローチできるターゲット層を新たに探し出す必要性が出てきます。

 

そういった場合にPAMを設定すれば、サービスや商品をアプローチする層を拡大して、新たなターゲット層に向けたアピールができるでしょう。

TAM・SAM・SOMはどんなときに使われる?

TAM・SAM・SOMについて解説しましたが、具体的にはどのようなときに使われるのでしょうか。ここでは、TAM・SAM・SOMがどんなときに使われるのかを2つ紹介していくので、参考にしてみてください。

新規事業を始める際に市場を把握できる

TAM・SAM・SOMは、新規事業を立ち上げる際に市場の大きさを把握する目的で使われます。新規事業を立ち上げるときにTAM・SAM・SOMを活用すれば、新規で参入しようとしている市場がどれほどの規模を持つのか、立ち上げた新規事業によってどの程度の収益を目標にできるのかを把握することが可能です。

 

TAM・SAM・SOMや3C分析をしっかり行わなければ、商品やサービス、新規事業の立ち上げはうまくいきません。投資家に「この企業は将来性がなさそう」と思われてしまう可能性もあるため、資金調達を行う際にもTAM・SAM・SOMの利用が重要になるでしょう。

 

特にSaaS事業で活用されやすい

TAMやSAMなどの基準は、主にSaaS事業でマーケット分析をする際に利用されています。

 

SaaS事業とはSoftware as a Serviceの略で、ネット上でいつでもアクセスできるサービスのことです。アカウントを持っていれば簡単に利用ができて、顧客は月額を支払ってサービスを利用します。そのため、企業側は一人の顧客に継続的にサービスを利用してもらうことが重要です。

TAM・SAM・SOMは市場規模や顧客層、ターゲット層を明確にできます。正確な顧客層を把握して顧客のニーズに応えられれば、サービスの継続的な利用が期待できるので、顧客に継続してサービスを利用してもらう必要があるSaaS企業では、特に重要とされるのです。

投資家が投資する際の基準になる

投資家が事業に投資すべきかそうではないかを判断するときに使われるのが、TAMやSAMです。投資家は、事業に投資する際にTAM・SAM・SOMを指標にしながら、成功する見込みがあるのか、将来性があるのかを判断します。

 

そのため、新規事業を立ち上げるために投資家から資金調達をしたいと考えている場合、TAM・SAM・SOMは必須ともいえるでしょう。

TAM・SAM・SOMの計算方法

TAM・SAM・SOMの必要性を解説したところで、TAM・SAM・SOMはどのように算出すれば良いのかについて見ていきましょう。

 

TAM・SAM・SOMの計算には、トップダウン分析とボトムアップ分析の2種類があります。それぞれで分析方法や注意点が異なるため、算出する際にはどちらの方法が良いのかをしっかりと把握してから行うようにしてください。

トップダウン分析

トップダウン分析とは、市場全体からターゲット層ではない市場を排除して分析する計算方法です。大規模な市場全体の数字から割合を引いて算出します。主にTAMを計算するときに使用される方法です。

 

トップダウンを計算するには、IDC、Gartner、Forresterといったリサーチ会社の出している予測を使用して市場に組み合わせてTAMを算出します。

トップダウン分析で注意すべきポイント

トップダウン分析をする際には、使用するデータや情報が新しいかどうかに注意してください。何年も前のデータを利用してトップダウン分析を行ったとしても、正確なデータを出すことはできません。データを利用してトップダウン分析を行うときは、必ず使用するデータが最新のものかどうか常にチェックするようにしましょう。

ボトムアップ分析

ボトムアップ分析では、顧客一人一人のデータなどからサービスや商品の需要の大きさを算出します。トップダウン分析と違い、実際に顧客にアンケート調査などを行って各顧客のニーズなどのデータを収集し、ミクロな視点から計算をするのが特徴です。SAMやSOMを計算する際によく使われます。

 

ボトムアップを計算するには、対象の顧客数と顧客単価からTAMの値を出すことが可能です。

 

顧客数の部分は、通常はIDC、Gartner、Forresterといったリサーチ会社、米国政府、世界銀行がデータとして提示している数字を使うケースが多いですが、顧客データが自社のプラットフォームにある会社の場合、自社の数字を使うこともあります。

ボトムアップ分析で注意すべきポイント

ボトムアップ分析を利用する際の注意点は、正確なデータを収集するために曖昧かつ抽象的な質問をしないようにすることです。できるだけ簡潔で分かりやすく、人によって異なった解釈にならないような具体的な質問事項を用意してください。

 

また、アンケートの対象者の規模を適度な大きさに設定することも重要です。

 

最初から大規模なアンケート調査を実施してしまうと、思わぬミスをしてしまう可能性もあります。まずは小規模なアンケート調査から行って、質問の意図が対象者に伝わっているか、質問内容に偏りはないかなどをチェックするようにしましょう。

TAM・SAM・SOMを設定するコツ

ここからは、TAM・SAM・SOMを設定する際のコツをそれぞれ紹介していきます。TAM・SAM・SOMは、新規事業の立ち上げや事業計画を練るのに非常に役に立つので、コツをしっかり把握してから慎重に設定しましょう。

TAM

TAMは、投資家や事業の承認者に事業内容や市場が魅力的だと認識してもらうのに極めて重要な指標です。また、SAMやSOMを設定する前に最低限必要な市場でもあります。

 

あまりにも非現実的すぎる市場を設定すると説得力に欠けるので、コントロール可能な市場の数値を設定することが重要です。前述の通り、TAMの数値は大きければいいというものではありません。勝負できそうな市場を選ぶことも非常に重要です。

SAM

SAMは大きいだけでなく、最終的にはトップに立てるように予測を立てて設定しなければなりません。

 

ランチェスター戦略によると、市場のシェアのうち41.7%のシェアを勝ち取ると、その市場を勝ち取ったことになります。そのため、41.7%という目標を達成できる市場規模かどうかを、SAMを使って判断してください。

SOM

SOMは短期的な視点から、SOMの数字を順調に撮れているかどうかを目安として考える必要があります。SAMの市場規模のうち、前述のランチェスター戦略の通り、SOMが41.7%取れそうかどうかで計画を立てましょう。

TAMの拡大事例を分かりやすく解説

TAMの計算方法やコツを実際に生かすにはどうすれば良いのでしょうか。ここでは、TAMが拡大した具体的な例を、SalesforceやShopifyなどを参考に解説していきます。トップダウン分析とボトムアップ分析のそれぞれの例を見ていきましょう。

トップダウン分析

Salesforceは大型企業買収を繰り返し、トップダウン形式でTAMをIPO時と比較して29倍に拡大させました。顧客ごとの単価を上げて収益を増やすボトムアップ方式ではなく、買収を行うことで市場を広げるトップダウン形式で、ここまでサービスを展開させています。

 

Salesforceが最初に立ち上げられた当時は、周囲が全くSaaSという新しいビジネス形態を理解しておらず、TAMは数値が驚くほど低かったにも関わらず、SalesforceはTAM拡大を意識する戦略を常に取り続けることで、TAMを急拡大させました。

ボトムアップ分析

Shopifyは、顧客単価を上げることで、IPO時と比較してTAMを15倍に拡大させています。

 

ShopifyはSalesforceとは全く違い、買収をすることなく、既存事業の成長だけでTAMを拡大させてきました。コアマーケットのビジネスが成功しただけでなく、他のマーケットエリアでも成功を収め、コロナの影響で伸びている事業もあります。

TAM・SAM・SOMは事業計画の立案にも役立つ

TAM・SAM・SOMを設定すれば、事業の規模や最終的な売り上げ目標を把握できます。そのため、事業計画の立案や事業内容を具体化するときにも大いに役立つでしょう。

 

説得力のある事業計画書を提出できれば、資金調達を行う際にも投資を受けやすくなるので、メリットは大きいです。

 

TAM・SAM・SOMを設定して、事業計画書の立案をより効率的に行うためには、データ分析が欠かせません。ツールを活用すれば、リアルタイムで更新される最新のデータを部署を超えて共有できるため、効率的なデータ分析が行えるようになります。説得力のある事業計画書の作成にお悩みの方は、ぜひScale Cloudをご活用ください。

まとめ

TAM・SAM・SOMは、新規事業の立ち上げの際に必要とされる指標です。TAMは、企業側が新規に立ち上げたサービスや商品などを使ってリーチできるターゲット層の最大の大きさ、サービスの需要の大きさを表します。

 

その中で、SAMは実際に顧客としてアプローチできるターゲット層、SOMは自社のサービスを限定的に利用する顧客層を指すのが特徴です。

 

TAM・SAM・SOMを活用することで、新規事業立ち上げの際に市場の大きさを把握できます。また、投資家が投資を行う際の基準にもなるので、資金調達の際にも必須といえるでしょう。

 

事業計画の立案にも役立つので、ツールなども活用しながらTAM・SAM・SOMを設定しましょう。

監修者

広瀬好伸
株式会社ビーワンカレッジ 代表取締役社長

プロフィール

京都大学経済学部卒、あずさ監査法⼈にてIPO準備や銀⾏監査に従事。
起業後、公認会計⼠・税理⼠として、上場企業役員、IPO、M&A、企業再⽣、社外CFOなどを通じて600社以上の事業に関わる。

公認会計士、 IPOコンサルタント、社外役員として計4度の上場を経験。
株式会社i-plug社外役員、株式会社NATTY SWANKY社外役員。

成長スピードの早い企業におけるKPIマネジメントやファイナンス、上場準備や上場後の予算管理精度の高度化といった経験を踏まえ、KPIのスペシャリストとして、日本初のKPIマネジメント特化SaaS「Scale Cloud」の開発・提供やコンサルティングに注力。
従来のマネジメント手法を飛躍的に進化させ、企業の事業拡大に貢献中。

講演実績

株式会社セールスフォース・ドットコム、株式会社ストライク、株式会社プロネクサス、株式会社i-plug、株式会社識学、株式会社ZUU、株式会社あしたのチーム、ジャフコグループ株式会社、トビラシステムズ株式会社、株式会社琉球アスティーダスポーツクラブなどの主催セミナー、日本スタートアップ支援協会などの経営者団体、HRカンファレンスなどのカンファレンス、関西フューチャーサミットなどのスタートアップイベントなどにおける講演やピッチも実績多数。

論文

『経営指標とKPI の融合による意思決定と行動の全体最適化』(人工知能学会 知識流通ネットワーク研究会)

特許

「組織の経営指標情報を、経営判断に関する項目に細分化し、項目同士の関連性を見つけて順位付けし、経営に重要な項目を見つけ出せる経営支援システム」(特許第6842627号)

アクセラレーションプログラム

OIH(大阪イノベーションハブ)を拠点として、有限責任監査法人トーマツ大阪事務所が運営するシードアクセラレーションプログラム「OSAP」採択。

取材実績

日本経済新聞、日経産業新聞、フジサンケイビジネスアイ、週刊ダイヤモンド、Startup Times、KANSAI STARTUP NEWSなど。

著書

『飲食店経営成功バイブル 1店舗から多店舗展開 23の失敗事例から学ぶ「お金」の壁の乗り越え方』(合同フォレスト)

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