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SaaSの主要KPI【ARR】

2021.06.24
SaaSの主要KPI【ARR】

ARRとは

①  MRRとARR

 

SaaS企業にとっての最も基本的で重要なKPIとしてMRRとARRがあります。

 

MRR(Monthly Recurring Revenue:月間経常収益)は、毎月繰り返し得られる売上のことです。

ARR(Annual Recurring Revenue:年間経常収益)は、その期間を1年に延ばした売上で、毎年決まって得られる売上のことです。

 

一口でSaaSといっても、

 

  • 安定的に継続してもらえるSaaS
  • 新規契約と解約が頻繁に起こるSaaS
  • 料金プランが複数用意されているSaaS
  • 年間契約する SaaS
  • 月単位での契約する SaaS

 

など、さまざまなSaaSがあります。

 

では、MRRとARRのどちらを重視すべきでしょうか?

 

たとえば、安定的に継続してもらえるSaaSや年間契約するSaaSであればARRで良いかもしれませんし、新規契約と解約が頻繁に起こるSaaSや月単位で契約するSaaSなどはMRRの方が良いかもしれません。

 

一般的には、 BtoC向けなど月単位で契約することが多く毎月の新規契約や解約が一定数発生しやすいSaaSは月単位のMRR、 BtoB向けなど年間契約が多いSaaSはARRが重視されるケースが多いです。

 

まずは自社のSaaSにとって、MRRとARRのどちらを重視するかを決めましょう。

 

②  ARRが重要な理由

 

  • ビジネスの成長を確認できる

 

SaaSビジネスにおいては、毎月どれくらいの売上が見込めるかを知ることはとても重要です。

そもそも、SaaSビジネスは月額の売上を積み重ねていくビジネスですが、その積み重ねの結果、その時点で、その時点以降1年間でどれくらいの売上が見込めるのかを示すARRは、とても重要な指標になります。

そして、このARRの推移を把握することで、SaaSビジネスの成長性を確認することができます。

 

  • 将来予測に役立つ

 

一般的には、後述する通り、ARRはMRRを12倍(12ヶ月分)したものとして計算されます。

ただ、SaaSの契約期間は、毎月、3ヶ月、6ヶ月、12ヶ月とまちまちでしょう。

12ヶ月の年間契約のSaaSの場合は、その契約のARRがそのまま今後の1年間の売上見込として、年間収支や事業計画に使えます。

たとえば、12月決算の会社で、1月に新規契約した契約のARRが120万円だとすると、当期の売上見込は120万円として、収支シミュレーションや予算に使えます。

一方、12ヶ月未満の契約の場合は、その契約における契約更新時のチャーンレートを加味した上で、今後の1年間の売上見込とする必要があるでしょう。

 

  • バリュエーションのベースになる

 

前述の2つの理由から、ARRはSaaSビジネスの成長性を確認できて将来予測にも役立つので、ARRは企業価値評価のベースになることが多いです。

SaaS企業の多くがエクイティ・ファイナンスによる資金調達を必要としますが、その際のバリュエーション算定においてはARRが使われることが多いので、特に資金調達を必要とするSaaS企業にとってはとても重要です。

 

ARRの計算式

ARR(円) = MRR(円) × 12ヶ月

ARRは、年間経常収益と呼ばれる通り、毎月発生する売上が該当し、初期費用、コンサルティング費用といった一時的な売上は含めません。

 

  • ARRに含めるもの

 

  1. 月額料金などのすべての経常的な売上
  2. 既存顧客からの増額になった経常的な売上(アップグレード)
  3. 既存顧客から減額になった経常的な売上(ダウングレード)
  4. 解約によって失った経常的な売上

 

  • ARRに含めないもの

 

  1. 初期導入時の一時的な売上(初期費用)
  2. アップセルやクロスセルによる単発の売上
  3. コンサルティング売上
  4. 一括課金による売上

 

ARRは、あくまで、その時点における MRRが12ヶ月間続いたらいくらになるかという数値であり、また、上記の通り、その計算に含まれる売上と含まれない売上があるので、ARRは、損益計算書上の売上高とは一致しないので注意してください。

 

そもそも、SaaSビジネスにおいて、損益計算書における会計上の売上は、トップラインを示す指標としては遅行指標すぎます。

 

売り切りのソフトウェアであれば基本的には販売時点で売上が一括計上されますが、SaaSの場合は、利用月ごとに売上が按分されて計上されます。

たとえば、12月決算で、12月に売り切りのソフトウェア120万円を販売すると会計上は120万円の売上がその期に計上されますが、SaaSの場合、同じく12月に ARR120万円の契約を締結したとしても、その期に会計上の売上として計上されるのは1ヶ月分の10万円だけになります。

 

つまり、会計上の売上は期末時点におけるSaaS企業の実力値を正しく評価しづらい遅行指標になるので、SaaSビジネスでは、ARRをトップラインのKPIとして、その時点におけるサブスクリプション契約の実力値を評価する方がいいでしょう。

 

ARR成長の4要素

ARRの成長を考える上では、次の4つの要素に分解して考えるといいでしょう。

 

①  新規顧客獲得によるARRの増加

②  既存顧客へのアップグレードによるARRの増加

③  既存顧客の解約によるARRの減少

④  既存顧客のダウングレードによるARRの減少

 

①  新規顧客獲得によるARRの増加

 

マーケティングや営業を通じて新規獲得する顧客数を増やすことで、ARRを増加させることができます。

一般的に、成長フェーズのSaaS企業における最も重要な成長ドライバーはこの新規顧客獲得によるARRの増加でしょう。

 

ではその新規顧客獲得のためにどれくらい投資すれば良いのでしょうか?

 

その判断指標として、ユニットエコノミクス(1顧客あたりの経済性)を使うのが一般的です。

これは、「LTV  ÷ CAC」で計算され、この数値が「3」以上になるように投資をするのが望ましいと言われています。

 

詳しくは以下をご覧ください。

 

SaaSの主要KPI【LTV】

SaaSの主要KPI【CAC】

SaaSの主要KPI【ユニットエコノミクス】

 

②  既存顧客へのアップグレードによるARRの増加

 

既存の顧客にプランをアップグレードしてもらうことや、自社が提供する他のSaaSプロダクトをクロスセルすることで、ARRを増加させることができます。

たとえば、ライトプラン月額10,000円からスタンダードプラン月額30,000円にプランをアップグレードするような場合です。

 

既存顧客に対してはエンゲージメントが取れた状態でマーケティングや営業ができるので、これによる追加ARRの獲得コストは、新規顧客獲得によるARR獲得コストに比べて低くなることが通常なので、ここを攻略することで、コスパの高いARR成長が可能になるはずです。

 

③  既存顧客の解約によるARRの減少

 

SaaSビジネスでは、顧客を維持することができれば、顧客数が積み重なっていき、ARRは自然と増加していきます。

逆に、既存顧客が解約になれば、当然、ARRは減少します。

 

顧客を維持していくためには、SaaSプロダクトが顧客が感じる価値にマッチしている必要があるため、顧客を知り、プロダクトを改善していく必要があります。

 

逆に、SaaSは、顧客に見合った価値を提供できていなければ容赦なく解約されてしまいます。

自社のSaaSが、顧客にしっかりと価値を届けることができているのかどうかをモニタリングしていく上で重要となるKPIがチャーンレート(Churn Rate:解約率)です。

 

ARRの成長を考える上では、このチャーンレートを抑えることが非常に重要になります。

 

詳しくは以下をご覧ください。

 

SaaSの主要KPI【チャーンレート】

 

④  既存顧客のダウングレードによるARRの減少

 

既存顧客が解約までは至らなかったとしても、既存顧客がプランをダウングレードすることで、ARRは減少します。

実務上、あまりないケースかもしれませんが、たとえば、スタンダードプラン月額30,000円からライトプラン月額10,000円にプランをダウングレードするような場合です。

 

当然、ARRの成長を考える上では、このダウングレードをできるだけ発生しないようにすることが重要です。

 

解約によるARRの減少と同様、顧客に見合った価値が提供できていないケース、過剰な機能提供になってしまっているケース、付加価値機能を使いこなせていないケースなど、さまざまな要因が考えられますので、解約に至らないうちにフォローすることが重要かもしれません。