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SaaSの主要KPI【CAC】

2021.08.02
SaaSの主要KPI【CAC】

CACとは

CAC(Customer Acquisition Cost:顧客獲得単価)とは、「 1 顧客獲得するために必要となるマーケティングや営業のコスト」を表すKPIです。

当然、低いコストで顧客を獲得できたほうが利益は増大するため、企業はCACを下げようと努力します。

 

CACとよく似たKPIに、CPAがあります。

CPAは「Cost Per Action」または「Cost Per Acquisition」の略で、意味はCACと同じで「顧客獲得単価」です。

 

CACとCPAは同じ意味のKPIですが、使用される場面が異なります。

CACは、SaaSというビジネス全体の顧客獲得単価を表す場合に用いられるKPIです。

一方のCPAは、マーケティングにおいて用いられることが多く、1顧客獲得に必要となったWeb関連の広告費を表す場合に用いられるKPIです。

 

CACの計算式

CACの一般的な計算式は次のとおりです。

CAC = 顧客獲得コスト ÷ 新規獲得顧客数

 

もう少し噛み砕くと、次のとおりです。

CAC = 当月の全ての販売・マーケティング活動にかかった金額 ÷ 当月に新規獲得した顧客数

 

CACの計算式に含める顧客獲得コストに何を含めるかは会社によって異なります。

Web広告などの広告宣伝費、営業やマーケティングの人件費、代理店の販売手数料、その他の外注費などを含めて計算するケースもあれば、広告宣伝費だけでCACを計算するケースもあります。

 

また、CACの計算式に含める顧客獲得コストに何を含めるかは場合によっても異なります。

つまり、CACは次の3種類に分類でき、それぞれ何を含めるかが異なります。

 

Organic CAC

自然増によって1顧客獲得するのにかかったコストを表します。

たとえば、Webページのオーガニック検索からの流入や、既存顧客からの紹介や口コミなどは、このOrganic CACに分類されます。

Organic CACは、広告などのコストをかけずに顧客を獲得することができたものなので、次の「Paid CAC」より低い(安価に顧客を獲得できている)ことが多いです。

 

Organic CACの計算式は次のとおりです。

Organic CAC = 自然増の顧客獲得にかかったコスト ÷ 自然増チャネルからの新規顧客数

 

Paid CAC

広告をはじめとしたお金を支払って、1顧客獲得するのにかかったコストを表します。

 

Paid CACは、有料チャネルを利用した顧客獲得単価を指しますが、そのチャネルごとにPaic CACを計算することも可能です。

チャネルごとにデータを分類・集計する必要がありますが、チャネルごとのコストパフォーマンスが測定できます。

 

Paid CACの計算式は次のとおりです。

Paid CAC = 有料チャネルにかけたコスト ÷ 有料チャネルからの新規顧客数

 

たとえば、Web広告やキャンペーンなどを行った場合、その効果を測定するためには、そこからの新規顧客数やコストを計算する必要があります。

しかし、そのCACは、広告やキャンペーンを行ったことによるものだけではなく、広告やキャンペーンを行わなくても自然と増えるCACもあります。

Organic CACとPaid CACを正しく区分せずにCACの計算をしてしまうと、正しい効果測定ができなくなる可能性があるので、マーケティングや営業の獲得効率を議論する際は、それらの活動の影響が把握しやすいPaid CACを中心に据えた議論をオススメします。

 

Blended CAC

Organic CACとPaid CACの2つを合わせた1顧客あたりの獲得コストを表します。

 

Blended CACの計算式は次のとおりです。

Blended CAC =(全営業コスト + 全マーケティングコスト) ÷ 新規顧客獲得数

 

つまり、冒頭の一般的なCACの計算式と同じです。

通常、CACを計算する場合は、このBlended CACを意味することが多いです。

 

SaaSビジネスにおいては、順調に成長していく中でも次のような悩みが絶えません。

 

  • 顧客数は順調に増加しているけど、先行投資が続き、収益は赤字続き。
  • 顧客数の増加を抑えてでも黒字化すべきかなのか?
  • それとも顧客数の増加をこのまま追い続けるべきなのか?

 

もちろんキャッシュの状況含め、多面的に検討して判断すべきことではありますが、収益改善と顧客増加、どちらも捨てがたいですよね。

 

このような場合、3種類のCACを把握することが有効かもしれません。

 

Organic CACとPaid CACを分けて計算する。

Organic CACを増やす施策とPaid CACを下げる施策を考える。

Organic CACの増額よりもPaid CACの減額を大きくすることでBlended CACを下げる。

 

CACを下げることで、顧客数の増加を抑えることなく収益を改善できる可能性があります。

 

CACが重要な理由

CACを把握する必要がある理由としては、大きく次の2つがあります。

 

投資すべきマーケティングチャネルを合理的に決定するため

自社のSaaSビジネスで、新規顧客を獲得するために活用できるチャネルはいろいろあるでしょう。

しかし、活用すべきチャネルを見誤れば、コストパフォーマンスの悪い広告コストを垂れ流し続けることになりかねません。

 

活用できるチャネル別に投資対効果を計測して、コストパフォーマンスの高いものに投資を集中させていくほうがいいでしょう。

刻々と変化する経営環境の中で、最適なマーケティングチャネルを合理的に決定し、最も効率よく効果を得るためには、CACの把握は欠かせません。

 

ユニットエコノミクスを計算するため

ユニットエコノミクスとは、1顧客あたりの採算性を表すKPIで、投資に対して回収期間が長いSaaSビジネスにおいてはとても重要視される指標です。

 

ユニットエコノミクスの計算式は次のとおりです。

ユニットエコノミクス = LTV ÷ CAC

 

この計算式のとおり、1顧客あたりの顧客生涯価値(LTV)を1顧客あたりの顧客獲得コスト(CAC)で割って計算するので、ユニットエコノミクスを計算するためにはCACが欠かせません。

 

CACの目安

CACはいくらくらいが最適なのかの目安については一概には語れません。

月額利用料金がいくらなのかによっても変わってきますし、チャーンレートがいくらなのかによっても変わってきます。

CACの目安を考える際には、LTVとのバランスで最適な水準を把握しましょう。

SaaSビジネスにおいては、「ユニットエコノミクスが3倍以上」が重要な目安となっています。

詳しくはSaaSの主要KPI【ユニットエコノミクス】をご覧ください。

 

ユニットエコノミクス = LTV ÷ CAC

で、このユニットエコノミクスが3倍以上になるようにするということは、CACの目安としては、LTVの3分の1以下にする必要があるということです。

これがCACの1つの目安になるでしょう。

 

ユニットエコノミクスを高めるためには、LTVを向上させ、CACを低下させることが重要になってきます。

しかし、CACをとにかく下げ続ければ良いということでありません。

 

たとえば、CACを低下させ続けて、ユニットエコノミクスが10倍になったとしましょう。

一見とてもいい状態にも思えますが、裏を返せば、「適切な投資ができていない」ということにもなります。

 

SaaSビジネスは、一般的に、マーケティングや営業のコストが先行し、契約後、それらを回収していくモデルです。

適切な投資ができていない、つまり、マーケティングや営業に先行投資できていないとすれば、その後の契約が伸びず、事業の成長性が低下する可能性もあります。

つまり、「攻めの投資」も必要なのです。

 

このように、CACは高すぎても低すぎても良くなくて、「LTVがCACの3倍」という水準を1つの目安に、CACの投資額をコントロールしていきましょう。

そして、その投資額をコントロールする際には、Organic CACとPaid CACの両者を把握しながら進めていきましょう。

 

CACを改善する方法

最後に簡単にCACを改善する方法に触れておきたいと思います。

 

その方法を一言で言うと、営業・マーケティングコストを最適化すると言うことです。

 

CACを下げるためには、営業やマーケティングにかかるコストを最適化する必要があります。

単純にそれらのコストを削減する方法としては、次のような方法があります。

 

  • 有料広告を抑えて自然流入を増やすためにコンテンツを増やしていく
  • 営業の移動時間を抑えてオンラインを活用した効率的な営業活動を行う
  • 業務をデジタル化して効率化したりアウトソース化して固定費を下げる
  • ランディングページを改善してCVR(コンバージョン率)を上げる

 

しかし、ただ下げれば良いと言うわけではなく、前述のとおり、LTVとのバランスが重要です。

このバランスについては、詳しくは次の記事をご覧ください。

 

SaaSの主要KPI【ユニットエコノミクス】

執筆者

広瀬好伸
株式会社ビーワンカレッジ 代表取締役社長

プロフィール

京都大学経済学部卒、あずさ監査法⼈にてIPO準備や銀⾏監査に従事。
起業後、公認会計⼠・税理⼠として、上場企業役員、IPO、M&A、企業再⽣、社外CFOなどを通じて600社以上の事業に関わる。

公認会計士、 IPOコンサルタント、社外役員として計4度の上場を経験。
株式会社i-plug社外役員、株式会社NATTY SWANKY社外役員。

成長スピードの早い企業におけるKPIマネジメントやファイナンス、上場準備や上場後の予算管理精度の高度化といった経験を踏まえ、KPIのスペシャリストとして、日本初のKPIマネジメント特化SaaS「Scale Cloud」の開発・提供やコンサルティングに注力。
従来のマネジメント手法を飛躍的に進化させ、企業の事業拡大に貢献中。

講演実績

株式会社セールスフォース・ドットコム、株式会社ストライク、株式会社プロネクサス、株式会社i-plug、株式会社識学、株式会社ZUU、株式会社あしたのチーム、ジャフコグループ株式会社、トビラシステムズ株式会社、株式会社琉球アスティーダスポーツクラブなどの主催セミナー、日本スタートアップ支援協会などの経営者団体、HRカンファレンスなどのカンファレンス、関西フューチャーサミットなどのスタートアップイベントなどにおける講演やピッチも実績多数。

論文

『経営指標とKPI の融合による意思決定と行動の全体最適化』(人工知能学会 知識流通ネットワーク研究会)

特許

「組織の経営指標情報を、経営判断に関する項目に細分化し、項目同士の関連性を見つけて順位付けし、経営に重要な項目を見つけ出せる経営支援システム」(特許第6842627号)

アクセラレーションプログラム

OIH(大阪イノベーションハブ)を拠点として、有限責任監査法人トーマツ大阪事務所が運営するシードアクセラレーションプログラム「OSAP」採択。

取材実績

日本経済新聞、日経産業新聞、フジサンケイビジネスアイ、週刊ダイヤモンド、Startup Times、KANSAI STARTUP NEWSなど。

著書

『飲食店経営成功バイブル 1店舗から多店舗展開 23の失敗事例から学ぶ「お金」の壁の乗り越え方』(合同フォレスト)

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