デューデリジェンスとは?種類や目的、進め方を分かりやすく解説

2022.05.19
デューデリジェンスとは?種類や目的、進め方を分かりやすく解説

デューデリジェンスとは、M&Aの際に実施される企業調査です。これからM&Aに関わる場合は、デューデリジェンスの知識を深めておく必要があります。しかし、「デューデリジェンスがどんなものなのか分からない」「種類が多すぎていまいち把握しきれない」という人もいるでしょう。

この記事では、デューデリジェンスとは何かやどんな種類があるのかについて解説していきます。実際の進め方や注意点についても紹介しているので、デューデリジェンスの内容を詳しく知りたいという方は、ぜひ記事を参考にしてみてください。

デューデリジェンスとは

デューデリジェンス(Due Diligence)とは、企業へ投資する際に相手先の経営状況や財務状況を調査することです。その頭文字を取って「DD」と略される場合もあります。

デューデリジェンスは、M&Aや企業再編する際には欠かせないプロセスの1つです。詳細は後述しますが「投資先に価値はあるのか」「問題を抱えていないか」をチェックする目的で実施されます。

デューデリジェンスの種類

デューデリジェンスには、目的ごとにさまざまな種類が存在します。全てのデューデリジェンスを実施する必要はありませんが、買収後に必要になる情報は事前に集めておきましょう。

代表的なデューデリジェンスは、以下の通りです。

  • ビジネスデューデリジェンス
  • 財務デューデリジェンス
  • 法務デューデリジェンス
  • ITデューデリジェンス
  • セルサイドデューデリジェンス
  • その他のデューデリジェンス

それぞれの特徴について詳しく解説していくので、1つずつ見ていきましょう。

ビジネスデューデリジェンス

ビジネスデューデリジェンスは、会社の経営・事業状況を総合的に調査するものです。主な項目は以下のようになります。

  • 事業内容
  • 競合他社
  • 仕入先
  • 顧客の属性
  • サービス内容
  • 市場状況
  • 技術状況

上記の項目を総合的に調査して、M&A実行に見合う価値があるかどうか判断します。M&A後にどのようなシナジー効果が生まれるかを判断する基準になるため、デューデリジェンスの中でも基礎的な調査です。

細分化した調査を実施する事前段階として、必ず実施するようにしましょう。

財務デューデリジェンス

財務デューデリジェンスでは、相手企業の財務状況について調査していきます。主な調査対象は、以下の通りです。

  • 過去の決算書や総勘定元帳
  • 予算表
  • 事業計画書
  • 監査法人の報告資料
  • 金融機関への提出資料
  • 給与支払い状況

上記の資料を参考にして、企業の資産力や収益力、キャッシュフローを判断していきます。この際には、売り手側の帳簿に虚偽がないことも明らかにする必要があるでしょう。財務デューデリジェンスの項目は、M&A実施後の収益に大きく関わるため、非常に重要です。M&Aの金額にも影響するので、慎重に行うようにしましょう。

法務デューデリジェンス

法務デューデリジェンスでは、株式状況や組織の法律面について調査します。主な調査対象は下記の通りです。

  • 契約状況
  • 株主
  • 債務状況
  • 許認可
  • 訴訟状況

上記の項目を総合的に判断して、買収先がどのようなリスクを抱えているかを判断します。中でも特に重要な項目が、訴訟状況です。売り手側が訴訟を抱えていると、トラブル解決に莫大なコストが掛かる場合があります。買収後のリスクを最小化するためにも、法務デューデリジェンスの実施は必須といえるでしょう。

人事デューデリジェンス

人事デューデリジェンスでは、人材面の制度について調査します。主な調査対象は、下記のようになります。

  • 人事評価制度
  • 人事規定
  • 人件費
  • 労使関係
  • 雇用状況

上記の状況を調査して、買収先の人事状況を判断していきます。人事デューデリジェンスが不足していると、人事制度の違いによって優秀な社員が離れることにもつながるので、注意が必要です。買収後に事業の成長が止まらないよう、人事デューデリジェンスは必ず実施しましょう。

ITデューデリジェンス

ITデューデリジェンスでは、情報システムなどのIT面を中心に調査します。具体的な調査項目は、以下の通りです。

  • 基幹システム(会計・人事労務・顧客管理・販売管理など)
  • システム管理に伴うコスト
  • システムのセキュリティ

上記の状況を調査して、買収後のシステム移行に必要なコストや時間を判断します。現代では社内管理の多くがIT化されているため、ITデューデリジェンスが実施される機会は多いです。特に、IT企業のM&Aを実施する場合は、ITデューデリジェンスを重点的に行っていきましょう。

セルサイドデューデリジェンス

セルサイドデューデリジェンスは「売り手側が実施するDD」です。通常のデューデリジェンスは、買い手側が買収先を査定する目的で実施されます。しかし、セルサイドデューデリジェンスは真逆の過程で行われるものです。

セルサイドデューデリジェンスの目的は、売り手側による売却価格の最大化です。売り手側の立場で専門家を招いて、M&Aにおけるメリットを提示します。また、売り手時に問題になりそうなポイントを事前に処理する場合もあるでしょう。

専門家を複数招くと費用が高額になってしまいますが、売り手側のメリットを考えるとなるべく実施しておきたいプロセスです。

その他のデューデリジェンス

ここまでご紹介したもの以外にも、より細分化されたデューデリジェンスも存在します。買収先の状況を考慮して、適切なデューデリジェンスを実施しましょう。具体的な内容は、以下のリストをご覧ください。

  • 環境デューデリジェンス
    保有する土地の汚染リスクなどを調査
  • 不動産デューデリジェンス
    保有する不動産の価値やリスクを調査
  • 知的財産デューデリジェンス
    保有する知的財産権について調査
  • 顧客デューデリジェンス
    顧客の属性を調査
  • 技術デューデリジェンス
    保有する技術や設備を調査
  • 人権デューデリジェンス
    人権侵害に関する調査。途上国に工場がある場合など。

買収後のプランニングに合わせて、実施項目を判断しましょう。

デューデリジェンスの目的

実際にデューデリジェンスを行う際には、実行前にその目的を把握しておきましょう。デューデリジェンスを実施する主な目的は、以下の4点です。

  • 企業の現状を把握できる
  • 経営統合の準備ができる
  • 費用対効果が明確になる
  • M&Aの実行に向けた判断をしやすくなる

それぞれの詳細について、詳しく解説していきます。

企業の現状を把握できる

M&Aを実施する際は、企業の現状を正確に把握する必要があります。なぜなら、M&Aでは利益だけでなくリスクも引き継ぐからです。企業の現状を十分に把握できていないと、思わぬトラブルが発生することもあります。買収後のトラブルを避けるためにも、デューデリジェンスは非常に大切なプロセスです。

経営統合の準備ができる

経営統合の準備を円滑化することも、デューデリジェンスの目的の1つです。M&Aを実施したとしても、買収先の事業とシナジーを発揮できなければ意味がありません。そのため、買収先の事業や体制をどのように自社と共存させるかを考える必要があります。

実際に、デューデリジェンスが不十分だったために、買収後に想定していた利益が出なかった事例も少なくありません。M&Aで最大の効果を発揮するために、経営統合の準備は必須といえるでしょう。

費用対効果が明確になる

M&Aによる企業買収は、買い手側が収益を見込めると判断して初めて実施されます。そのため、M&Aによる費用対効果は非常に重要なポイントです。買収額に対するリターンが不明瞭なままでは、買い手側もM&Aに踏み切れません。逆にいうと、デューデリジェンスにより費用対効果の明確化は、売却価格が上がる理由にもつながります。

売り手側企業も、セルサイドデューデリジェンスなどを活用して、積極的に協力するようにしましょう。

M&Aの実行に向けた判断をしやすくなる

一口にM&Aといっても、その手法はさまざまです。

  • 株式取得
    株式の3分の2以上を取得して、経営権を得る手法。
  • 事業譲渡
    事業の全てまたは一部を譲渡する手法。
  • 会社分割
    会社の権利全てまたは一部を包括的に継承する手法。

主に上記の3点がM&Aでは用いられますが、双方の環境によって最適な手段は異なります。そのため、デューデリジェンスによって最適な手段を判断しなければいけません。デューデリジェンスによって問題が発覚した場合「株式取得」の予定を「事業譲渡」に変更することもありえます。M&Aの判断を最適化するためにも、必ず実施するようにしましょう。

デューデリジェンスの進め方

では、実際にデューデリジェンスを進める際にはどのような手順で進めていけば良いのでしょうか。この項目では、デューデリジェンスの進め方について解説していきます。

デューデリジェンスの流れは、以下の3ステップです。

  • 調査チームを作って調査方針を決定
  • 資料を確認して調査を実施
  • 調査結果を踏まえて検討

それぞれの手順について、詳しく解説していきます。

調査チームを作って調査方針を決定

まずは、調査チームを作って調査方針を決めていきます。調査チームは部門の担当者の他に専門家を招くようにしましょう。招く専門家は、実施したいデューデリジェンスによって異なります。

  • ビジネスデューデリジェンス:ビジネスコンサルタント
  • 財務デューデリジェンス:公認会計士や税理士
  • 法務デューデリジェンス:弁護士

上記のように、目的に応じた専門家を招致してください。

調査チームを作ったら、次は調査方針を決定します。

  • 調査期間
  • 調査にかける予算
  • 重点的に調査する項目

上記のような方針を策定して、調査内容が乱れないようにしましょう。

資料を確認して調査を実施

調査方針が決定したら、実際に資料を確認してデューデリジェンスを実施します。確認する資料は、売り手側の企業に請求しましょう。受け取った資料を専門家がチェックして、M&Aのメリットやリスクを調査します。資料だけでは得られない情報がある場合は、専門家による聞き取り調査も実施してください。

聞き取り調査が必要な場合は、事前に質問項目をまとめておくとスムーズに進行できます。聞き取り調査を実施する際は、基本的に売り手側の企業で行うことになるため、社員にM&Aの進行を悟られない配慮が必要です。

調査結果を踏まえて検討

デューデリジェンスが完了したら、調査結果を踏まえてM&Aの内容を検討しましょう。リスクが大きい場合は、M&A自体の中止も視野に入れる必要があります。許容範囲内のリスクを抱えている場合は、買収金額の交渉もできるでしょう。買収金額の交渉をする場合は、不良債権などの項目を活用して交渉を進めてください。

全ての問題が解決した段階で、M&Aを実施してください。

デューデリジェンスの注意点

デューデリジェンスの手順が分かったところで、最後に注意点についても触れていきます。

デューデリジェンスで注意するべきポイントは、以下の2つです。

  • タイミングに気を付ける
  • どのくらいの期間がかかるのか把握しておく

それぞれの項目について、詳しく解説していきます。

タイミングに気を付ける

デューデリジェンスを実施する際は、タイミングに注意してください。デューデリジェンスは、M&Aの基本合意契約が終わった後に実施します。最終条件を決定するまでの間に済ませなければいけないため、タイミングはシビアになりがちです。

だからといって、基本合意締結前からデューデリジェンスを進めてしまうと、売り手側の企業から不信感を持たれる原因になります。反対に、タイミングが遅れると、競合の買い手企業に出遅れてしまいます。

デューデリジェンスを進める際は、適切なタイミングを見極めるようにしましょう。

どのくらいの期間がかかるのか把握しておく

デューデリジェンスは、実施項目により変化はありますが、おおよそ1〜2ヶ月の期間が必要です。必要な期間の見積もりが甘いと、買収計画自体に影響してしまいます。デューデリジェンスの実施前には、必要項目からある程度正確な期間を見積もっておきましょう。

まとめ

当記事では、デューデリジェンスの目的や進め方について解説していきました。デューデリジェンスは、M&Aにおいて非常に重要なファクターです。M&Aにおいて、相手企業の詳細やリスクを把握することは必須といえます。調査の注意点も頭に入れつつ、適切なデューデリジェンスを実施できるようにしましょう。

企業の経営状況や財務状況を判断するためには、さまざまな指標に注目することも大切です。企業運営に関わる指標について知りたい方は、下記の資料をご参照ください。

監修者

広瀬好伸
株式会社ビーワンカレッジ 代表取締役社長

プロフィール

京都大学経済学部卒、あずさ監査法⼈にてIPO準備や銀⾏監査に従事。
起業後、公認会計⼠・税理⼠として、上場企業役員、IPO、M&A、企業再⽣、社外CFOなどを通じて600社以上の事業に関わる。

公認会計士、 IPOコンサルタント、社外役員として計4度の上場を経験。
株式会社i-plug社外役員、株式会社NATTY SWANKY社外役員。

成長スピードの早い企業におけるKPIマネジメントやファイナンス、上場準備や上場後の予算管理精度の高度化といった経験を踏まえ、KPIのスペシャリストとして、日本初のKPIマネジメント特化SaaS「Scale Cloud」の開発・提供やコンサルティングに注力。
従来のマネジメント手法を飛躍的に進化させ、企業の事業拡大に貢献中。

講演実績

株式会社セールスフォース・ドットコム、株式会社ストライク、株式会社プロネクサス、株式会社i-plug、株式会社識学、株式会社ZUU、株式会社あしたのチーム、ジャフコグループ株式会社、トビラシステムズ株式会社、株式会社琉球アスティーダスポーツクラブなどの主催セミナー、日本スタートアップ支援協会などの経営者団体、HRカンファレンスなどのカンファレンス、関西フューチャーサミットなどのスタートアップイベントなどにおける講演やピッチも実績多数。

論文

『経営指標とKPI の融合による意思決定と行動の全体最適化』(人工知能学会 知識流通ネットワーク研究会)

特許

「組織の経営指標情報を、経営判断に関する項目に細分化し、項目同士の関連性を見つけて順位付けし、経営に重要な項目を見つけ出せる経営支援システム」(特許第6842627号)

アクセラレーションプログラム

OIH(大阪イノベーションハブ)を拠点として、有限責任監査法人トーマツ大阪事務所が運営するシードアクセラレーションプログラム「OSAP」採択。

取材実績

日本経済新聞、日経産業新聞、フジサンケイビジネスアイ、週刊ダイヤモンド、Startup Times、KANSAI STARTUP NEWSなど。

著書

『飲食店経営成功バイブル 1店舗から多店舗展開 23の失敗事例から学ぶ「お金」の壁の乗り越え方』(合同フォレスト)

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