IPOを目指すための事業計画の作り方やポイントを解説

2022.03.01
IPOを目指すための事業計画の作り方やポイントを解説

企業がある程度の規模まで拡大すると、次に意識するのはIPO(新規上場)ですよね。しかし、それを達成するためには審査に通る必要があり、合理的な事業計画を立てることが求められます。この記事では、IPOを目指すための事業計画の作り方やポイントを解説していきます。

IPOにおいて事業計画が重要な理由

事業計画を立てるのは、事業運営の具体的な行動を内外に示すために非常に重要です。特に、IPOを意識し始めた企業は、主幹事証券会社、監査法人、コンサルティング会社といったIPOを支援してくれる機関と連携してIPOに向けて行動し、関係機関は企業が立てた事業計画を精査して、今後の方針を決定します。

 

また、IPO達成後は企業の株価が投資家の目に触れることになるため、上場前は市場開設者による厳正な審査を通過しなければいけません。この審査時に事業計画の提示が求められます。特に、東証マザーズでは「事業計画の合理性」を上場審査の条件として提示しているほどです。このように、事業計画はIPOにおいて非常に重要な役割を果たします。

IPO時の事業計画の作り方

事業計画に書かなければならない内容は特に決まっていませんが、主に下記の内容で構成されます。

 

  • 会社概要/沿革、設立経緯/経営理念、方針/目標
  • 事業内容
  • 製品やサービスの特徴
  • 競合他社の分析
  • 戦略立案
  • 売上や利益の計画
  • 資金調達の計画

 

各項目のボリュームによってフォーマットを構成します。では、それぞれの内容を記載する理由や、内容のポイントについて見ていきましょう。

会社概要/沿革・設立経緯/経営理念・方針/目標

企業概要には会社名、本社所在地、代表取締役、設立年、資本金などの基本的な情報を記載します。沿革・設立経緯には社会情勢の変化や代表者の事業経験を元に内容を考えることで、事業への思いをアピールできます。また、合併や社名変更があった過去を記載することで企業が拡大していることも分かるため、事業に対して合理性を感じられるでしょう。

 

経営理念・方針は、「顧客とどのような関わりをしていきたいか」「どのような会社を目指すか」といった内容で起業の方向性を示します。目標はニュアンス的な表現ではなく、「国内トップシェア率を○年後に達成」のように具体的に記載しましょう。こういった定量的な計画も、合理性を判断するための重要材料になります。IPOだけではなく、顧客との信頼関係構築や資金調達の実現も可能にするはずです。

事業内容

外部関係者に自社の事業計画を分かりやすく示すために、事業内容を具体的に記載しましょう。省略した事業計画を立てている企業も数多く見受けられますが、上場申請書類に記載欄があるため、事業計画に事前に盛り込んでおくと申請がスムーズに進むはずです。

 

製品やサービスの特徴

製品やサービスの特徴を記載することで、参入マーケットに競合他社が複数あったとしても事業の合理性を示すことにつながります。同じような商品・サービスがすでに存在している場合は、それらとの違いを明確にし、独自性を理解してもらいましょう。

競合他社の分析

主観的な事業計画にならないために、客観的な視点で競合他社の分析を行い、他社の強みやそれを踏まえた自社の弱みを事業計画に記載します。業界内の全ての企業を競合ととらえてしまうと情報量が膨大になり、自社が埋もれてしまいます。これを防ぐために、売上やシェア率などの基準を設け、ある程度の領域に限定した分析を行うと良いでしょう。また、競合他社の分析を行うことは事業戦略立案にも活用できます。

戦略立案

自社の今後の成長を戦略的に考えましょう。その際の注意点として「上場できなければ目標を達成できない新規事業」は計画しないようにしましょう。こういった計画は合理性を見出すことが難しく、より厳正な審査が行われる可能性があります。合理性のある戦略とは、重要KPIが設定されていて、目標達成までのプロセスが具体化されたものです。こういった戦略を立案するためには、SWOT分析という方法を活用することをおすすめします。

戦略立案にはSWOT分析

「Strength(強み)」「Weakness(弱み)」「Opportunity(機会)」「Threat(脅威)」の4つの要素の頭文字をとってSWOT分析と呼び、企業のビジネス戦略策定や経営資源の最適化を目的として活用されます。

 

SWOT分析は、競合他社や自社が展開するマーケットなどの外部環境と、自社のブランド力や品質力といった内部環境を、強み・機会のプラス面と弱み・脅威マイナス面に分けて分析します。SWOT分析は目的を明確にする、前提条件を整理する、広い視野を確保するなど、ポイントを押さえて実施すれば効果的に活用することが可能です。

 

フレームワークを行う上で目的が不明確な場合、期待する効果を得られない可能性が高くなります。「良い戦略が思いつかないからなんとなくやってみる」というのは避けましょう。目的を決めたら次に前提条件を整理します。SWOT分析を行う目的に応じて前提条件は変化するので、分析対象となる顧客や競合は誰・どこなのかを整理し、メンバー間で共有することが必須です。そして、SWOT分析を行うメンバーに、さまざまな視点を持った人材を選出することで、広い視野を確保できます。例えば、経営陣などのトップ層の他にマーケティング、エンジニア、カスタマーサポートなど、社内から最適な人材を選出しましょう。

 

さらに、SWOT分析のメリット・デメリットを理解することも重要です。SWOT分析によって具体的にどのようなメリットを得られるのか、どんなデメリットがあるのか、見ていきましょう。

 

SWOT分析メリット

  • 弱みや脅威に目を向けることで課題を可視化することができる
  • 客観的な視点を持つことができる

 

SWOT分析のデメリット

  • 強み、弱みは正反対の要素であるため、細かい部分まで網羅することが難しい
  • SWOT分析に当てはまらない場面がある

 

SWOT分析は戦略立案に活用しやすいフレームワークですが、全てが完璧なわけではありません。SWOT分析以外にもさまざまなフレームワークがあるため、企業の課題に応じて適したフレームワークを実施しましょう。

売上や利益の計画

売上や利益の計画は非常に重視されるポイントです。具体的な数値を出し、商品やサービスが複数ある場合はそれぞれを分け、どの要素を伸ばせば効率的に売上・利益を出せるかを把握しましょう。

 

ビジネス経験が少ない場合は、客観的な要素を多く含んでいる、第三者が収集・蓄積した競合他社や参入マーケットの情報を基に実現可能な計画を予測すると良いです。

 

また、利益は売上⇒売上原価⇒人件費⇒原価償却費⇒販売費⇒管理費⇒借入利息⇒法人税など、順を追って予測することで、営業利益や経常利益といった細かい部分まで予測できます。

資金調達の計画

利益が出ている=資金が足りているというわけではありません。現在は利益があっても、今後資金不足に陥る可能性もあるため、資金調達の計画を立てましょう。特に、IPO準備企業は資金調達、持株比率、キャピタルゲインの3要素を含む資本政策を立てる必要があります。

 

東証マザーズの審査規定「流通株式」の項目には、「上場日における流通株式の時価総額が5億円以上となる見込みのあること」「流通株式の数が、上場のときまでに上場株券等の25%以上となる見込みのあること」と記載されています。つまり、IPOに向けた資金調達計画を含む資本政策は、上場後をイメージして、それを目指して進む逆算方式で考えると良いでしょう。

 

IPOできる事業計画のポイント

IPOの審査では事業の合理性が問われると前述しましたが、合理的な事業計画とはどのようなものなのでしょうか。IPOを実現可能にする事業計画のポイントとして、以下の5つが挙げられます。

 

  • 積み上げ方式に変更していくことを意識する
  • 具体的な数値を元に作成する
  • 主観的にならないようにする
  • 実現できる計画にする
  • 事業計画の全体で矛盾が生まれないようにする

 

これらについて詳しく見ていきましょう。

積み上げ方式に変更していくことを意識する

IPO時にもっとも重視される点は「事業計画の合理性」で、東証マザーズの審査条件にも具体的に記載してあります。事業計画を作成する際は、経営陣などトップ層の思考が優先されがちで、トップダウン方式の計画になっていることが度々あります。

 

しかし、そういった計画は自社の弱みや競合の強みに目を向けていない主観的な内容になっている場合が多く、客観的な視点が少ない事業計画は合理性がないと判断されてしまいます。

 

また、トップ層の思考には社員の考えが反映されていないこともあり、高すぎる売上目標や方向性のズレた経営理念・方針は社員を困惑させるでしょう。IPOを意識するのであれば、こういったトップダウン式ではなく、将来に目を向けつつ社員の意見を取り入れた「積み上げ方式」に変更していくことを意識する必要があります。

具体的な数値を基に作成する

具体的な数値を基に事業計画を作成することによって、なぜその計画になったのか根拠を明確にできます。その際に、自社が収集・蓄積した情報から分析した数値に固執してしまうと偏りのある内容になり、支援企業などの外部関係者が見たときに不適切な内容ととらえられる可能性があります。それによって信頼を失ってIPOのチャンスを逃すこともあるため、注意しましょう。

 

市場規模などの外部環境に関係する情報は、第三者が収集・蓄積・分析した数値を採用することで、こういった問題を未然に防げます。また、第三者の情報から得た数値を基に売上予想を数値化すれば、事業計画の実現可能性を裏付けられます。数値によって客観性が増した事業計画はIPOのみではなく、融資を希望する際にも役立つはずです。

主観的にならないようにする

先ほども解説しましたが、事業計画の内容が主観的にならないように注意しましょう。例えば、自社を過大評価した内容の事業計画書は、第三者が見たときに「計画性がなく、裏付けが疑わしい」と判断される可能性があります。

 

競合他社に関する情報や自社の弱みなどにも触れた事業計画になるように心がけてください。競合の現状や自社の弱みを分析することで、事業戦略の立案にも活用できます。また、参入予定の市場調査を事前に行い、調査内容を記載するとなお良いでしょう。

 

すでに顧客の多い市場の場合は、その中で誰をターゲットにしようと考えているか、顧客が少なく未開拓の市場であれば、今後どのようにその市場を普及させるかといった内容をできるだけ客観的な視点を踏まえた上で記載します。できるだけ客観的な視点で事業計画を作成しましょう。

実現できる計画にする

IPO後は多数の投資家が自社の株式を投資対象としてみるようになります。投資家の立場で考えてみると、実現可能な事業計画を立てている企業には投資する価値があると判断できますが、実現不可能な事業計画を立てている企業には投資価値を見出せないというのが分かるでしょう。

 

このような観点から、IPOの審査には事業計画書の提示が求められており、事業計画書の内容によっては審査に通らないこともあるのです。また、不備のない現実的な事業計画を立てれば、事業プロセスがスムーズに進むことも期待できます。

 

そして、前述した事業計画のポイントである「具体的な数値を基に作成する」、「主観的にならないようにする」に気を付ければ、実現できる計画立案につながるでしょう。

事業計画の全体で矛盾が生まれないようにする

事業計画は、複数回見直した上でブラッシュアップを重ねましょう。事業計画の中で矛盾が生まれてしまうと、計画自体が信用できないものになってしまうのです。第三者が見たときにも「なぜ項目によって言い分が異なるのか」と思われてしまうので、全体で矛盾が生まれないように必ず確認してください。

 

また、誰が読んでも分かりやすい事業計画にするには、数値はできるだけグラフや表で可視化するなどの工夫をしましょう。その際、ビジュアルに凝りすぎず、できるだけシンプルに仕上げることをおすすめします。一目見ただけで分かりやすくなれば、修正事項や矛盾も発見しやすくなるはずです。

まとめ

ここまで、IPOを目指すための事業計画作成のポイントについて詳しく解説してきました。IPOはあくまで企業拡大の通過点に過ぎないので、IPOだけでなくその後を見据えた事業計画を作成することが重要です。まずは、確実にIPOの審査に通るよう、記事の内容を踏まえた上で合理的な事業計画を作成しましょう。

 

事業計画の作成にお悩みの方は、下記の資料も参考にしてみてください。

監修者

広瀬好伸
株式会社ビーワンカレッジ 代表取締役社長

プロフィール

京都大学経済学部卒、あずさ監査法⼈にてIPO準備や銀⾏監査に従事。
起業後、公認会計⼠・税理⼠として、上場企業役員、IPO、M&A、企業再⽣、社外CFOなどを通じて600社以上の事業に関わる。

公認会計士、 IPOコンサルタント、社外役員として計4度の上場を経験。
株式会社i-plug社外役員、株式会社NATTY SWANKY社外役員。

成長スピードの早い企業におけるKPIマネジメントやファイナンス、上場準備や上場後の予算管理精度の高度化といった経験を踏まえ、KPIのスペシャリストとして、日本初のKPIマネジメント特化SaaS「Scale Cloud」の開発・提供やコンサルティングに注力。
従来のマネジメント手法を飛躍的に進化させ、企業の事業拡大に貢献中。

講演実績

株式会社セールスフォース・ドットコム、株式会社ストライク、株式会社プロネクサス、株式会社i-plug、株式会社識学、株式会社ZUU、株式会社あしたのチーム、ジャフコグループ株式会社、トビラシステムズ株式会社、株式会社琉球アスティーダスポーツクラブなどの主催セミナー、日本スタートアップ支援協会などの経営者団体、HRカンファレンスなどのカンファレンス、関西フューチャーサミットなどのスタートアップイベントなどにおける講演やピッチも実績多数。

論文

『経営指標とKPI の融合による意思決定と行動の全体最適化』(人工知能学会 知識流通ネットワーク研究会)

特許

「組織の経営指標情報を、経営判断に関する項目に細分化し、項目同士の関連性を見つけて順位付けし、経営に重要な項目を見つけ出せる経営支援システム」(特許第6842627号)

アクセラレーションプログラム

OIH(大阪イノベーションハブ)を拠点として、有限責任監査法人トーマツ大阪事務所が運営するシードアクセラレーションプログラム「OSAP」採択。

取材実績

日本経済新聞、日経産業新聞、フジサンケイビジネスアイ、週刊ダイヤモンド、Startup Times、KANSAI STARTUP NEWSなど。

著書

『飲食店経営成功バイブル 1店舗から多店舗展開 23の失敗事例から学ぶ「お金」の壁の乗り越え方』(合同フォレスト)

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