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もう失敗しない!絶対に知っておきたいKPIマネジメントの失敗例10選

2021.04.25
もう失敗しない!絶対に知っておきたいKPIマネジメントの失敗例10選

近年、急速にKPIマネジメントが広がってきています。

KPIマネジメントが注目される背景として、大きく次の3点が挙げられるのではないかと思っています。

 

①企業としての生産性を高める必要がある

日本経済は長らく閉塞感に包まれています。

労働人口の減少やグローバル経済での競争力低下などが大きな原因でしょう。

「数は力なり」を信じるとすれば労働人口の減少は競争力の低下を意味するのかもしれません。

労働人口が減ったとしても企業全体としての生産性が高まれば競争力は高められるのかもしれませんが、その生産性もグローバルで比べると日本企業は低いと言われています。

その生産性をあげる活路としてKPIが注目されているのではないでしょうか。

グローバルで比べても日本の製造業は強いと言われ続けてきました。

その理由の1つとして、ブルーカラーの世界では、例えば、工場における工程管理や品質管理といった面でKPIの活用が進んでいて、「カイゼン」を徹底的に行っていたことが挙げられるでしょう。

一方、ホワイトカラーの世界では、まだまだKPIの活用が進んでおらず、勘や経験に頼る部分がたくさん残っています。

そういった点でKPIが注目されていると考えています。

②経営環境の変化に対応する

企業経営を取り巻く環境の変化が激しく、、、、といったフレーズは頻繁に目にしますよね。

そういった環境だからこそ、企業としても柔軟かつスピーディーに対応していく必要がある、、、というフレーズも頻繁に目にします。

スピードだけでは不十分で、当然、「適確に」対応する必要もあります。

そう考えた時に、先程の「勘や経験」ばかりに頼っていると、適確にスピーディーな対応が難しくなる面が出てきます。

また、勘や経験に頼る経営から脱却するために、「ロジカルにデータや数字を活用して経営していこう」という企業が増えてきました。

そうした時に、従来から利用されてきたデータ(数字)である会計データ(財務会計と管理会計)は、たとえば、4月のデータが5月になってから出てくるといったようにリアルタイム性が低くて、かつ、わかりにくいデータなので、なかなか活用が進んできませんでした。

一方、KPIであればリアルタイム性が高く、誰でもわかりやすいデータ(数字)なので、これを活用することで、適確かつスピーディーな経営をしていこうという背景があるはずです。

③成長企業がやっている

なんだかんだで、これが最大の「背景」だと思います。

つまり、前述のような経営環境でも成長している企業の多くがKPIを活用しているということが、KPIが注目されている最大の理由だと考えています。

その「成功メソッドを取り入れて自社も事業拡大しよう」というのが本音の会社も多いでしょう。

企業成長に必須のファイナンスの世界でも、特にエクイティ・ファイナンスにおける投資判断では、KPIを活用するのがもはや常識になっています。

また、KPIで企業価値がはかられる局面も増えてきて、企業価値の評価という点でもKPIは注目の的です。

さらに、上場審査においても予算管理の精度が大きな課題となっている中で、その精度を高めることと、事業計画の蓋然性を説明するということにおいて、KPIがもはや必須になっています。

上場企業においても同様に、株主への説明責任を含むIRの一環として、または予算管理の精度向上の一環として、KPIが注目されてきているのも事実です。

 

このようにKPIマネジメントがますます注目される中、その難易度は決して低くはありません。

成長企業がやっている具体的なKPI活用メソッドが、世の中に広く流通しているわけではありませんし、まだまだKPIマネジメントの専門家も少ないですし、歴史も浅くメソッドが体系化されているわけでもありません。

 

しかし、弊社では、創業来14年間、600社以上の経営支援に携わる中で培ったKPIマネジメントのノウハウがあります。

このノウハウを世の中に広め、日本企業の生産性を高める支援をすることにより、日本経済の閉塞感を打ち破りたいと、強く思いながら活動しています。

 

KPIマネジメントを成功させるには、「経営と現場」「理想と現実」「理論と実務」「全体最適と部分最適」「長期と短期」といった相反するもののバランスを取っていくことが重要です。

ちょっと抽象的ですよね。

この後、KPIマネジメントの失敗パターンを一緒に見ながら、KPIマネジメントの成功セオリーのヒントにしていただければ嬉しいです。

MECEになっていない

社長:さぁ!当社もこれからはKPIを活用していこう!

社員:はい!ところで、どんなKPIを追っていきますか?

社長:そうだな。まずはみんなで案を出してみよう!

こうして、「顧客単価」「顧客数」「成約率」の3つのKPIが選ばれました。

このような流れでKPIを決めていないでしょうか?

 

ブレスト的にみんなで案を出しあって、その中から重要なものを議論しながら選ぶというプロセス自体はいいと思います。

ただ、これだと重要なKPIが漏れやすいという欠点があります。

MECE(漏れなくダブりなく)に重要なKPIを洗い出すには、KPIツリーを使うといいでしょう。

KPIツリーをつかってKPIを洗い出すと、たとえばこのような感じになります。

 

KPIツリーの作り方としては、因数分解をするイメージです。

因数分解、、、子供の頃に習ったものですが、たとえば、20を因数分解すると、

 

20=4×5

 

になる、というやつですね。

そして、これをさらに因数分解すると、

 

20=2×2×5

 

に分解できます。

このように「もうこれ以上分解できない!」というところまで因数分解することを、「素因数分解」と言います。

できればぜひ素因数分解してみてください。

 

この図に沿って説明すると、

① 売上を因数分解すると「顧客単価×顧客数」になる。

② 顧客数をさらに因数分解すると「成約率×商談数」になる。

③ 商談数をさらに因数分解すると「アポ率×テレアポ数」になる。

 

といった具合に、どんどん因数分解していくイメージです。

このようにすることで、「売上」を構成するKPIがMECEに洗い出せます。

ちなみに、このKPIツリーの「売上」を「利益」にすれば、例えばこのようになります。

このようにKPIツリーの起点は「何をKGIにしたいのか」によって決まってきます。

言い方を変えると、「改善したいもの」を起点にKPIツリーを作りましょう。

 

また、こういったKPIツリーの構造は、事業内容によって当然変わってきますので、事業ごとにぜひKPIツリーを作ってみてください。

KPIツリーの詳しい作り方については、こちらのホワイトペーパーを参考にしてみてください。

 

 

 

 

 

KPIツリーの階層が浅い

KPIツリーを作っていても、因数分解がしっかり出来ていない、つまり、素因数分解まで出来ていないと、「何をやるべきなのかがよくわからない」ということになりがちです。

例えば、この図のケースで考えてみましょう。

 

これだと、「商談数を増やすためには何をすべきなのか」がはっきりしません

そうすると、「どのようにして商談数を増やすのか」は各営業マン任せになりがちです。

そうなると、結局、各営業マンのマンパワーに頼ることになってしまって、ビジネスとしての再現性が高まりません。

 

事業の立ち上げ時期ならまだしも、事業の拡大期になれば、「1人の100歩より100人の1歩」の考え方で、特定の人のマンパワーへの依存度を下げて、誰でも着実に1歩前進していけるような仕組みをつくっていかねばなりません。

 

例えば、先ほどの図をさらに因数分解すると、次の図のようになったとします。

 

このようにすれば、商談数を増やすためには、

 

・テレアポ数を増やす

・アポ率(テレアポしてアポが実際に取れる率)を高める

 

といったように、「何をするべきか」が明確になります。

 

もちろん、例えばこの「テレアポ数」をさらに因数分解することもできます。

このようにどんどん因数分解することで「何をやるべきか」がより明確になっていきます。

 

このようなKPIツリーについて少し補足します。

 

左にいけばいくほど「結果」で、右にいけばいくほど「行動」です。

結果のKPIを「財務KPI」、行動のKPIを「行動KPI」と私たちは呼んでいますが、この行動KPIを明確にすればするほど、「何をやるべきか(どういった行動をするべきか)」がわかりやすくなります。

 

KPIマネジメントの失敗の1つとしては、「KPI管理はしているが、それをみても、何をしたらいいのかよくわからない」という状態で、行動につながらないことが多いです。

実際の行動につながらなければ結果は良くなりません。

この行動KPIを日々マネジメントしていくことで行動につながり、結果として、財務KPIもよくなっていくでしょう。

 

違う見方をすると、KPIツリーの右にいけばいくほど「先行指標」となっています。

つまり、時の流れは右から左に流れていっています。

先ほどの図でいえば、「テレアポをして商談をして成約して売上につながる」という流れになっています。

 

結果はなかなかコントロールできません。

コントロールすべきは時系列の早い先行指標です。

先行指標が悪くなれば(テレアポ数が減れば)、そのうち商談数が減って、成約数も減って、売上も減っていく可能性が高くなります。

ですので、重点的にコントロールすべきは先行指標です。

 

そのためにも、できるだけKPIツリーを因数分解していきましょう。

先ほどの図でいえば、KPIツリーの階層は3階層ですが、ぜひ一度、10階層くらいまで因数分解してみてください。

 

KPIツリーの作り方が最適ではない

KPIツリーは作り方によって「見える世界」が大きく異なります。

例えば、次のKPIツリーを見てください。

 

商談数を、

 

・テレアポから獲得した商談数

・Webから獲得した商談数

 

に因数分解しています。

そうすると、それより上位階層の「商談数」「成約率」「顧客数」「顧客単価」のすべてが、「テレアポから獲得したもの」と「Webから獲得したもの」の合計になってしまいます。

そうなると、仮に「成約率が下がっている」となった場合に、テレアポからの成約率が下がっているのか、Webからの成約率が下がっているのかがわかりません。

 

これを次のKPIツリーのように作り変えたとします。

先ほどのKPIツリーとは違って、顧客数をまずは、

 

・テレアポから獲得した顧客数

・Webから獲得した顧客数

 

に因数分解して、その後、それぞれで「成約率」と「商談数」に因数分解しています。

こうすれば、テレアポからの成約率が下がっているのか、Webからの成約率が下がっているのかが一目瞭然です。

ですので、仮に「顧客数が下がっている」とした場合も、

 

・テレアポからの成約率が下がっているのか

・テレアポからの商談数が減っているのか

・Webからの成約率が下がっているのか

・Webからの商談数が減っているのか

 

がはっきりするので、どこに手を打てばいいのかがわかりやすくなります。

 

デメリットとしては、「顧客数」や「商談数」を、

 

・テレアポから獲得したものなのか

・Webから獲得したものなのか

 

に分けてデータを取らないといけないことで、KPIの運用負担が重くなるということです。

同じように「売上」を次のように分けることもできます。

 

売上をエンタープライズ売上とSMB売上に分ける

 

②売上を新規売上とアップセル売上・クロスセル売上に分ける

③売上を商品・サービス別に分ける

また、「顧客数」を次のように分けることもできます。

 

①顧客数を新規顧客とリピート顧客に分ける

 

 

 

どのように分解していくのが自社にとってベストなのか、メリットとデメリットのバランスをとりながら、最適なKPIツリー設計を目指しましょう。

 

たくさんのKPIのなかで優劣をつけられていない

今度は逆に、「たくさんのKPIを追いかけすぎて運用が大変」という失敗です。

 

これは2つのパターンに区別されます。

 

・KPIツリーを作っているパターン。

・KPIツリーを作っていないパターン。

 

まず1つ目の「KPIツリーを作っているパターン」から。

KPIツリーを細分化して作れば作るほど、当然、KPIの数が増えていきます。

次のKPIツリーであればKPIの数は4つです。

一方、次のKPIツリーであればKPIの数は6つです。

 

当然、KPIの数が増えれば増えるほど、その数だけKPIのデータをとってこないといけないのでデータ集約に時間と手間がかかります。

 

また、そのデータがもともとあるのであればとってくるだけでいいかもしれませんが、そのデータがそもそもないものであれば、そのデータを取れるように業務フローを見直したりしないといけません。

つまり、運用コストが重くなるということですね。

最悪の場合、運用が大変すぎて、KPIマネジメントが形骸化してしまったり、運用されなくなったりします。

 

次に、「KPIツリーを作っていないパターン」を考えてみましょう。

 

KPIツリーを作ってはいないけれども、たくさんのKPIを洗い出して管理しているという状態です。

このパターンでも、前者と同じように運用コストが重くなるという問題が発生します。

 

さらに、このパターンでは、「KPIの数が多すぎて、どれを見たらいいのかわからない」という問題も発生します。

 

次の図に沿って説明します。

 

このようにKPIツリーを作っていれば、仮に顧客数が減っている場合に、

 

・成約率が下がっているのか

・商談数が減っているのか

 

さらに、商談数が減っているのであれば、

 

・アポ率が下がっているのか

・商談数が減っているのか

 

といったように、たくさんKPIがあっても、どのKPIに問題があるのかを特定しやすくなります。

 

これが、KPIツリーを作っていない、つまり、洗い出して運用しているたくさんのKPI同士の関係性がはっきりしていないと、特定のKPIが悪い時に、そのKPIとどのKPIが関係していて、かつ、どのようにどれくらい関係しているかもわからないので、原因の特定が難しくなります。

 

こういった失敗をしないためのポイントがいくつかあります。

KPIツリーを作ることは大前提として、その上で、

①クラウドシステムを活用して、たくさんのKPIデータを自動(半自動)取得することで、データ集約の時間と手間を省く。

②たくさんのKPIの中から、その中でも特に重要なKPI(Scale Driver)を選んで、それらを中心に運用する。

 

というのがポイントです。

 

①は社内にエンジニアがいらっしゃれば、スプレッドシートを使ってKPIデータを自動(半自動)で取得するプログラムを組むことはできるでしょう。

ただ、それがオススメできない理由としては、ただでさえ忙しいエンジニアに、それをやってもらうくらいなら、本業(自社プロダクトの開発など)に専念してもらった方がいい、と思うからです。

 

②については、ちょっとアナログにはなりますが、「数字遊び」をすることでScale Driverを発見することができます。

このKPIツリーであれば、6つのKPIの数値をいろいろ変動させてみて、KGIである売上にどれくらいインパクトがあるかを見るということです。

 

具体的にいうと、例えば、

 

(ア)アポ率を頑張ってあげたとすると、あと1%くらい上がる可能性がある。

(イ)テレアポ数は、今の人員であれば、あと1,000社は増やせそう。

 

とすれば、

 

・(ア)のようにアポ率が1%上がれば、テレアポ数が今のままだとすると商談数がどれくらい増えて、成約率が今のままだとすれば顧客数がどれくらい増えて、顧客単価が今のままだとすれば売上がどれだけ増えそうか、という数値

 

・(イ)のようにテレアポ数が1,000社増やせば、アポ率が今のままだとすると商談数がどれくらい増えて、成約率が今のままだとすれば顧客数がどれくらい増えて、顧客単価が今のままだとすれば売上がどれだけ増えそうか、という数値

 

の両者の数値を見比べて、数値の大きい方が売上に対するインパクトが大きいので、そのKPIをScale Driverに認定する、という要領です。

 

ちなみに、少しPRになってしまって恐縮ですが、①も②も、弊社のScale Cloudであれば解決できるので、お困りの方はご連絡ください。

 

部門ごと・事業ごとにバラバラで管理している

ビジネスの現場においては、営業・マーケティング・経営管理など、部署ごとにデータがバラバラになってしまっていて、部署ごとの部分最適な経営になってしまっているケースが多く見受けられます。

 

・営業部は営業チームで、SFA(営業支援システム)やエクセルなどを使って営業のKPIを追っている。

・マーケティング部はマーケティング部で、MA(マーケティング支援システム)やGoogleAnalyticsやスプレッドシートなどを使ってマーケティングのKPIを追っている。

・経営管理部は経営管理部で、財務会計システムや予算管理システムを使って会計データや予算データの管理を行っている。

 

次のKPIツリーで考えてみましょう。

今月の商談数の目標が100社で、その内訳として、テレアポからの商談が50社(担当は営業部)、Webからの商談が50社(担当はマーケティング部)だったとします。

そして、Webからの商談の進捗がよくなくて、40社になりそうだったとします。

この時、1つの解決策としては、Webからの商談の未達成見込み10社を、テレアポからの商談を10社増やすことでカバーすればいいですよね。

つまり、マーケティング部の未達を営業部がリカバリーするということです。

 

しかし、部門ごとにバラバラにKPI管理をしていると、営業部は営業部で自部署の目標である50社だけを追っていて、マーケティング部はマーケティング部で未達の10社を何とかリカバリーしようと奮闘するでしょう。

その結果、頑張って疲弊した割には結局45社になってしまって目標未達成になってしまう。

 

そうなると結局、事業全体としては今月の目標が未達成になってしまうでしょう。

部門横断的に、全体最適な目線でKPIマネジメントができていないことが失敗の原因です。

 

つまり、営業部は先ほどの図でいうと赤枠のKPI、マーケティング部は緑枠のKPIしか見てない(見えていない)のでしょう。

 

これは何も営業部とマーケティング部だけのことではなくて、

 

・会社としてはA事業とB事業がある

・事業拠点としてはC事業所とD事業所がある

・営業部としてはEさんとFさんとGさんがいる

 

といった場合も同じことが起こりえます。

平たくいうと「セクショナリズム」による問題ですね。

 

このセクショナリズムの問題がKPIマネジメントでも起こってしまいます。

そもそも企業に対する顧客の要求はクロス・ファンクショナル、つまり、部門横断的なので、コストの問題にせよ、品質や納期の問題にせよ、一つの機能、一つの部門だけで解決できるものではないはずです。

そこで、全社的な経営課題を解決するために、事業部や役職に関わらず、時には社外からも人材を集めてクロス・ファンクショナル(機能横断的)に事業運営していく必要があるでしょう。

 

そのためには、

 

①各部署のKPIを集めてKPIツリーとしてまとめる

②各部署が自部署のKPIだけではなくKPIツリーを使って全体のKPIの状況を理解する

③全体の目標を達成するために部門横断的にリカバリー策を考えて行動する

ことが大切ですね。

そうすることで、

 

・マーケで新規リード獲得数が未達成になりそうなので、インサイドセールスで架電数を増やして、フィールドセールスへの商談供給量を確保しよう、そうすることで、全社的な売上目標をみんなで達成しよう。

 

・マーケティングでのいまのリード数の増加傾向からすれば、セールスでの商談数が増えていく見込みだけどいまの営業の生産性でまわせるのか?いや、まわせなさそうなので、早めに営業マンを採用をしていこう。

 

・エンジニアの稼働率がこんなに下がっていっているまた新規採用するのか?いや、一旦新規採用は止めておこう。

 

・Webチャネルより代理店チャネルの方が顧客獲得単価が下がっていく傾向にあるので代理店へのフォローを強化しよう。

 

と言ったように、組織の壁を超えて、組織横断的な意思決定やマネジメントができるようになります。

 

予算や財務と紐づいていない

KPIマネジメントをする目的って何でしょう?

多くの会社が「目標」を達成するためではないでしょうか?

 

チームの売上目標、事業部の予算、会社の事業計画といった「目標」を達成するためにKPIマネジメントをしているケースがほとんどでしょう。

しかし、KPIマネジメントをしているケースの多くが、その目標としっかり結びついていません。

例えば、会社の予算で考えてみましょう。

KPIマネジメントをしている会社の多くは、スプレッドシートやダッシュボード(グラフ)を使って管理しています。

一方、予算は、別のエクセルや、予算管理ソフト・会計ソフトなどを使って管理しています。

 

このように、KPIと事業計画が別々に管理されていて一元管理されていません

 

では、一元管理するというのはどういうことでしょうか?

次の2点がポイントです。

 

①KPIを使って予算を立てる。

②KPIを使って予算実績比較を行う。

 

まずは①から。

 

このKPIツリーのように、KPIごとに計画を立てることで、売上予算、費用予算、利益予算が出来上がるようにしましょう。

このKPIツリーで言えば、右から左に向かって順番に計画を立てていくイメージです。

 

・テレアポ数の目標は1,000で、そのアポ率は1%を目標にしよう。

・そうすると商談数は10になるはずなので、成約率の目標を20%とすれば、顧客数は2になる。

・顧客数が2で、顧客単価の目標を10にすれば、売上予算は20になる。

 

という具合です。

その上で、この「売上20」が本来目標とする予算に足りないのであれば、各KPIの目標値を再度見直しながら、売上20を達成できるような各KPIの目標値を決定します。

 

もちろん逆でもOKです。

 

利益予算が決まってて、その内訳として売上予算と費用予算が決まってる。そして、それを達成するために必要な各KPIの目標値を、左から右に向かって順番に決めていくイメージです。

 

・売上予算が20で、顧客単価は一旦今のまま据え置きしたとして10とすると、売上予算を達成するには顧客数は2必要になる。

・顧客数2を獲得するためには、いまの成約率のアベレージが20%なので、商談数を10つくる必要がある。

・商談数を10つくるためには、テレアポ数1,000とアポ率1%を目指そう。

 

という具合です。

いずれでもOKなのですが、要は、各KPIの目標値と、予算を結びつけることが重要です。

 

これができていれば②は簡単です。

仮に次のような結果になったとしましょう。

赤字が計画で、緑字が実績です。

利益の未達成が2となっています。

その原因は、費用は計画通りとなりましたが、売上の未達成が2となっていることです。

 

ではその売上の未達成2の原因はというと、顧客数の実績は計画を上回っていますが、顧客単価の実績が大きく計画を下回っていることが原因です。

 

このように予算の未達成原因がはっきりとわかります。

 

そうすると、

 

・顧客単価がなぜこれほどまでに下がってしまったのか

・どのようにして顧客単価をあげていくのか

 

というように改善策も具体的に考えやすくなりますね。

 

ここで、ポイントとしては、顧客数の実績は計画を上回っていますが、このように、あるKPIの結果が良かったとしても油断しないでください。

 

この顧客数をさらに深掘りしていくと、成約率の実績は計画通りですが、商談数の実績が大きく計画を上回っています。

 

さらに、商談数が良かった原因は、テレアポ数の実績が計画の2倍も達成していることが大きな原因で、一方の、アポ率の実績が計画の50%しか達成していないということがわかります。

 

このようにあるKPIの結果が良かったとしても、さらに深掘りすれば(KPIツリーを右へ右へとたどっていけば)、良かったKPIと悪かったKPIがあって、良かったKPIが悪かったKPIを上回っているからこそいい結果につながった、ということがよくあります。

こうなれば、悪かったKPIの原因分析と改善をする必要がありますよね。

 

つまり、顧客数の実績が良かったからといってそれで終わらないことが大切です。

KPIツリーに出てくるすべてのKPIについて、計画に対して実績がどうだったのかという分析をしていきましょう。

 

これまで予算とKPIの関係について書いてきました。

では次に財務とKPIの関係についてです。

 

財務とはなんぞや?となると、いろいろな定義があるので、ここでは「キャッシュ・フロー」としましょう。

 

つまり、PLの予算だけではなく、CF(キャッシュ・フロー)までKPIと結びつけていきましょうということです。

 

次のKPIツリーを見てください。

先ほどのKPIツリーとほとんど同じなのですが、利益5がCF20に変わっています。

売上20がすべて一括で当月入金される(そのような契約になっている)のに対して、費用15は当月末締め翌月末払い(そのような支払条件になっている)なので当月には支払いが発生しないため、

 

CF 20=売上入金 20 − 費用支払 0

 

となっています。

このように、PLの利益と、実際のCFとの差を「資金のKPI」と呼んでいます。

 

資金のKPIについて、こちらの記事に詳しく書いているのでぜひご覧になってください。

 

PLがどれだけ良かったとしてもCFが悪ければ会社は倒産します。

そういう意味でも、この資金のKPIである「CCC(キャッシュ・コンバージョン・サイクル)」はとても重要ですね。

 

予算実績比較で、予算の達成・未達成をKPIを使って分析したように、CFがよくないならば、ぜひこのCCCがどうなっているのかを分析してみましょう。

KPIと予算、さらにはCFまで結びつけて一元管理してみましょう。

 

結果の分析ばかりで予測に活用できていない

毎月、前月のKPI実績を分析して振り返りをしていますか?

または、毎週、前週のKPI実績を分析して振り返りをしていますか?

 

目標や計画、予算などに対する各KPIの達成または未達成と、その原因分析をされていることでしょう。

もしくはそう言ったものとの対比まではしていなくて、シンプルにKPI実績について振り返りをしているかもしれません。

 

そう言った「結果の分析」は何のためにしているのでしょうか?

 

過去を分析すること自体が目的になってしまっているケースもあるかもしれませんが、そうではなくて、「これから何をすべきなのか」を意思決定するために過去を分析しているのだと思います。

つまり、未来に向けた意思決定をするために過去を分析しているのでしょう。

 

未来に向けた意思決定をするためには、「今のままだったらどうなるのか?」を知ることがとても大切ですよね。

KPIを使って過去を分析してその結果を報告するだけではなく、KPIを使って未来を予測して経営の意思決定に役立てることを考えてみましょう。

 

「予測」という言葉を使ってしまうと、「予測が当たる」「予測が当たらない」といった議論になりがちなので、ここではあえて、「このままいくとこういった未来になる可能性が高い」というシミュレーション的なニュアンスで話を進めていきたいと思います。

次のKPIツリーを見てください。

・テレアポしてから商談に至るまでの平均的なリードタイムが1ヶ月

・商談してから成約に至るまでの平均的なリードタイムが1ヶ月

 

だったとします。

そして、

 

・4月のテレアポ数が計画2,000に対して達成率75%の実績1,500

 

だったとします。

 

そうすると、テレアポから商談までのリードタイムが1ヶ月なので、5月の商談数は、アポ率が1%のままだとすると15(=1,500×1%)になりそうです。

そして、5月の商談数が15になってしまったとすると、商談から成約までのリードタイムが1ヶ月なので、6月の顧客数(成約数)は、成約率が20%のままだとすると3(=15×20%)になってしまいそうです。

 

そうなると、6月の売上は、計画40に対して30になってしまう可能性が高い、と言ったことが予測できます。

このようにKPIツリーとリードタイムというKPIを組み合わせれば、「今のままだったらどうなるのか?」というシミュレーションが簡単にできます。

とてもシンプルな例でお話ししましたが、KPIツリーとリードタイムのKPIの粒度をもっと細かくしていけば、さらにシミュレーションの精度が上がっていくでしょう。

このようにシミュレーションできれば、「6月の売上が、計画40に対して30になってしまう可能性が高い」ので、その対応策とすれば、例えば、

・5月の商談数を増やすために、5月のテレアポ数を増やしたりアポ率を高めたりしても、(アポから成約までのリードタイムが合計2ヶ月なので)7月の売上にはプラスになるが、6月の売上に対しては効果が薄い。

・5月の商談数を増やすことではなく、すでにつくった5月の商談に対する成約率を高める必要がある。

 

という施策が考えられます。

 

では成約率を何%まであげる必要があるでしょうか?

これも簡単に逆算で計算できます。

 

・計画の売上40を達成するためには、顧客単価が10のままだとすると、顧客数(成約数)を今のシミュレーションの3から4にする必要がある。

・商談数が15しかないので、顧客数4を達成するためには、成約率は27%(=4÷15)を上回る必要がある。

 

という具合です。

その上で、「成約率を20%から27%にするにはどうしたらいいか?」という具体的施策をチームで話し合ってアクションしていくという流れです。

 

また、顧客単価を高める施策も考えられます。

 

・5月の商談数が15で、成約率が20%のままだとすると、6月の顧客数は3になる可能性が高い。

・計画の売上40を達成するためには、顧客数が3だとすると、顧客単価を14(=40÷3)以上にする必要がある。

 

という具合です。

その上で、「顧客単価を10から14にするにはどうしたらいいか?」という具体的施策をチームで話し合ってアクションしていくという流れです。

 

ちなみに、毎月、目先の「顧客数」ばかりを血眼になって追っていて、その他のKPIが後回しにされがち、ということはないですか?

目先の結果(顧客数)ばかりに執着してしまって、商談数やテレアポ数といったKPIが未達成になりがちではないですか?

テレアポ数が未達成になれば、来月の商談数、さらには、再来月の顧客数が未達成になる可能性が高くなってきます。

そうなると、最も結果として評価される目先の顧客数を達成するために、成約率の高そうな見込客に再度アプローチするといったことに追われて時間を費やしがちです。

それ自体はとても大切ですが、そうして商談数やテレアポ数が置き去りになってしまうと、来月や再来月も顧客数の目標達成に苦労するといったように、負のスパイラルに陥ってしまいがちです。

商談数やテレアポ数はその月の顧客数の目標達成には必ずしも直結しないかもしれませんが、数ヶ月後の顧客数の目標達成するためにとても重要だと認識して取り組んでいくことが大切です。

 

このように、KPIを活用して、

 

・今のままだったらどうなりそうかを予測する

・その予測と計画との差分(特に足りないところ)をはっきりさせる

・その差分をどのようにして解決するかを考えてアクションする

 

という仕組みを組織のマネジメントにおいて定着させてはどうでしょうか。

 

週次で追えていない

KPIマネジメントをしている会社で、「月単位ではやっているけど週単位ではやっていない」という会社は少ないかもしれません。

 

組織的なマネジメントを実現するためには、組織全体で「数字(データや指標など)」を活用する必要があります。

会社経営で活用される数字は主に会計情報をはじめとした財務情報とKPI情報をはじめとした非財務情報に大きく区分できます。

 

ここで、まず両者の長所と短所について整理してみましょう。

なお、以下では財務情報の主たる情報である損益計算書(以下、「PL」という)と非財務情報であるKPIを比べながら整理してみます。

 

①プロセスマネジメントができる

PLは、たとえば、1月の結果が出てくるのが2月になってからになります。

つまり、その情報を把握する時点では、もう結果が出てしまっているため結果論になっちゃいますよね。

もちろん、1月の月中の進捗管理といったプロセスマネジメントには使えません。

 

一方のKPIは、多くのものが日次または週次で数値が出てくるので、1月の結果が出る前に、結果に至る月中のプロセスマネジメントにも使えます。

 

②情報の粒度が細かい

PLの情報の中には、たとえば、売上高という勘定科目の中を見ても、顧客数や顧客単価、さらには成約率や商談数といった詳細な情報は把握できません。

つまり、PLの情報は粒度が粗く、それだけでは詳細がわかりにくいのです。

言い方を変えれば、「売上実績が予算に対して90%だった」としても、PL情報だけでは、その原因がわかりづらいので対策をたてることができず、また、「営業利益率がいま5%なのでもっとあげよう」といっても、何をすればいいのかわかりづらく、結果として行動につながりづらいんですよね。

 

一方のKPIは、情報の粒度が細かく、ビジネスの状況が詳細にわかります。

「売上実績が予算に対して90%だった」というときでも、顧客数が足りなかったのか、それとも顧客単価が低かったのかといったように原因がすぐにわかるので、対策も立てやすい。

さらに、顧客数が足りなかった原因も、商談数が足りなかったのか、成約率が低かったのかといったように、どんどん詳細にブレイクダウンして深堀りできるので、何をすればいいのかが明確になりやすい。

 

③直感的に理解できる

PLは簿記といった専門知識がないと読み解くのに苦労します。

一方のKPIは、そのような専門知識がなくても誰もが直感的に理解しやすい。

 

④事業全体が見えづらい

PLは情報の粒度が粗いものの事業全体の状況が一覧できます。

 

一方のKPIは、営業部は営業のKPI、マーケティング部はマーケティングのKPIといったように、部門ごとにバラバラに管理していてサイロ化しているので、事業全体を俯瞰してみようと思えば、各部門のKPIを集約して一覧できるようにしないといけない。

 

⑤信用情報になりにくい

デット・ファイナンスの与信判断に利用されるのはPLをはじめとした財務情報です。

いくらKPIがよくても財務情報が悪ければファイナンスは難しい。

つまり、デット・ファイナンスにおいてKPIは信用情報になりにくいのです。

ただし、エクイティ・ファイナンスにおいてはそうとも言い切れず、PLが悪くてもKPIがよければファイナンスできる可能性は高い。

 

このように、両者には一長一短がありますが、ここで特に注目して欲しいのが①から③です。

 

財務情報(PL)では月中の進捗管理ができず、また、その情報を読み取れる現場の社員がほとんどいません。

一方のKPIは、月中の進捗管理ができて(=週次でマネジメントができる)、その情報を誰でも読み取ることができ、進捗が悪い原因がわかりやすいので、具体的な行動につなげやすいのです。

 

この差は大きいですね。

 

つまり、せっかくKPIマネジメントをやるからには、週単位でやるからこそ、そのメリットがしっかりと享受できて、月次の目標達成に向けて効果がある、ということです。

逆にいうと、PLベースでのマネジメントでは、週単位でやることは実質的にかなりハードルが高い(毎週、週次決算しないといけない)です。

 

ではどのようにして週単位でKPIマネジメントをすればいいでしょうか。

次の図をもとに考えてみましょう。

 

弊社のScale Cloudの画面の一部ですが、先ほどまでのKPIツリーが縦に並んでいます。

 

4月の第1週目の週次マネジメントを例にしています。

 

・まず、KPIごとに第1週目の実績データを集約します。

・次に、KPIごとに4月末の着地見込を入力します。

・着地見込と計画(参考までに前年実績)を比べて差分を明確にします。

・未達成になりそうなKPIについて改善施策を考えて行動します。

 

シンプルにいうと、このようなサイクルを週単位で回していくイメージです。

 

チームマネジメントにおいても同様です。

 

たとえば、Aさん、Bさん、Cさん、Dさんがいる営業チームを考えてみましょう。

 

・まず、各人ごとに、KPIごとに第1週目の実績データを集約します。

・次に、各人ごとに、KPIごとに4月末の着地見込を入力します。

・各人ごとに、着地見込と計画(参考までに前年実績)を比べて差分を明確にします。

・各人ごとに、未達成になりそうなKPIについて改善施策を考えて行動します。

 

一方、営業チームのリーダーは、チーム全体の数字もみなければなりませんよね。

 

・チーム全体での実績データを確認します。

・チーム全体での着地見込データを確認します。

・チーム全体の着地見込と計画(参考までに前年実績)を比べて差分を明確にします。

・その差分(特に未達成になりそうなKPIと、どれくらい未達成になりそうかという数値)をどうやってうめるかをチーム全体の全体最適な目線で考えます。

・必要に応じて、チームメンバー各人の目標値を見直して、再度、改善施策を考えなおします。

 

このように週単位で組織・チームのPDCAをスピーディーに回していくことで、目標達成する仕組みを作り習慣化していきましょう。

 

盲目的になってしまっている

最近、サブスクリプション型のサービスがどんどん増えていますね。

 

その要因のひとつとして、追っていくべきKPIがはっきりしているので、予算実績管理がしやすく、事業の成長性が投資家サイドから見てもわかりやすいということがあると思います。

また、売上が積み上がっていくストック型ビジネスは、一度成約してしまえば解約するまでお金が継続に入ってくるのも魅力的ですよね。

たとえば、スタートアップの世界では、「CACとLTVというKPIが推奨される形で成立する」ことが重要と言われています。

LTV÷CAC で計算されるユニットエコノミクスが3倍以上あればいい、という目安です。

 

しかし、CACとLTVによってビジネスが成立しているかどうかを推し量る、という考え方はスタートアップの世界でこそメジャーですが、金融機関からするとそこまで重要ではない情報です。

もう少しファイナンス論的に言えば、資本コストの高い世界(エクイティ・ファイナンス)で注目されている指標のみを盲目的に信じてしまっていないか、ということです。

 

KPIマネジメントはまだまだここ数年で急に流行し始めたものですが、PLやBSといった財務諸表は、何百年という歴史のあるもので、エクイティ・ファイナンスの世界に限らない世の中全般的にはまだまだ重要視されています。

 

サブスクリプション型のビジネスは、キャッシュインとキャッシュアウトのタイミングは読みやすい。

顧客の課題やニーズに合わせて、サービスやプロダクトをカスタマイズして、アップセルとして販売していくことで早期に黒字転換を目指すこともできます。

また、クロスセルで単価の高いものを販売し、一旦キャッシュ・フローを+にしていくという戦略も取れるでしょう。

 

いわゆるスタートアップの世界の中で重要視されている指標のばかりに注目して、盲目的に追いかけてしまうことは、ビジネスの本質からズレていく可能性があって危険です。

たとえば、ファイナンス的な目線で考えてみましょう。

スタートアップの世界で、ユニットエコノミクス(及びその前提としてのCACやLTV)が語られる場面では、「最初は赤字だけどその後は黒字になる」という典型的なJカーブを描くことを前提としすぎている感じがします。

ファイナンス目線で考えれば、基本的には負債コストよりも株主資本コストの方が高いことが多いため、必ずしもエクイティ・ファイナンスによる資金調達が絶対の正義だとは言えません。

早期に黒字を出して、デット・ファイナンスによる資金調達で事業を伸ばし、どこかのタイミングでエクイティ・ファイナンスでの資金調達をして、事業を一気に加速させる、というパターンもありえると思いますし、そういった選択肢を残しておく方が合理的かもしれません。

 

つまり、何もサブスクリプション型のビジネスモデルだから、といって、または、スタートアップだからといって、

 

・最初は赤字でその後に黒字になるというJカーブを描くような計画を立てる

・そのためにエクイティ・ファイナンスに頼る

 

という選択肢がすべてではないですし、それを盲目的に信じすぎるのはどうなのでしょうか、という投げかけです。

 

ここでは、ユニットエコノミクス、LTV、CACといったKPIを例に書きましたが、その他のKPIでも同様のことが言えます。

たとえば、SaaS(Software as a Service)ビジネスでは、一般的に、粗利率は70%程度になることが多いと言われている、とします。

それを、誰かから聞いた、またはネットで調べていたら出てきた、とします。

 

そこで、「SaaSビジネスを展開している当社の粗利率は、いまのところ60%程度なので10%ほど改善しないといけない」と考えてしまうのは早計です。

先ほどの「粗利率70%」のロジック(なぜそれが一般的、または標準値と言えるのか)をしっかり理解した上で比べるのはいいとしても、そうではなくて、このような「●●のKPIは○%くらいが標準値だよ」ということを盲目的に信じるべきではないかもしれません。

 

仮に、原価の構成が、

 

・カスタマーサポートまたはカスタマーサクセスなどの契約後のサポート人員の人件費

・サーバー代を含むシステム維持費用

 

だったとします。

 

そこで、「粗利率を10%下げる必要がある」または「そうしないと投資家から評価されない(エクイティ・ファイナンスによる資金調達が難しくなる)」と考えて、主なコストであるサポート人員の人員削減(または必要以上に抑えた)をしたとします。

 

確かに、サポート人員の人件費が多すぎて、それを前提に成り立つビジネスモデルであれば、労働集約的なビジネスモデルで、事業拡大しにくいという面があって、投資家から評価されにくいのかもしれません。

 

しかし、そうすることで、ユーザーに対するサービスクオリティが落ちてしまっては、ビジネスの本質からすれば本末転倒になってしまわないでしょうか。

 

このように、KPIの標準値とされるものを盲目的に追い求めてしまうと、ビジネスの本質、たとえば、「顧客により高い付加価値を提供する」ためということよりも、「エクイティ・ファイナンスをする」ためという目的が主眼となってしまって、ビジネスとしては本末転倒になってしまっていることにならないでしょうか。

 

標準値とされるものをベンチマークとするのであれば、

 

・なぜその標準値が良いとされているのか(そのロジック)

・自社に当てはめた時にいまその標準値をベンチマークとして追いかけるべきなのか

・将来的にその標準値を目指すとして、どのようなスピードでそこを目指していくのか

 

といったことを慎重に見極めましょう。

 

詰めるけど責めない

数字で管理されて嬉しい人は少ないはずです。

そもそも管理されること自体が嫌な人も多いでしょう。

 

なので、「数字」と聞くと、

 

・私を管理する面倒なもの

・ノルマとして降ってきて上長から詰められる厄介なもの

 

として敬遠する人が多いのは事実です。

 

当然、KPIマネジメントでも同じことが起こります。

 

部長:「成約数の達成率が悪いけどどうしてなんだ?」

部下:「それは×××が理由でして、、、」

部長:「なぜそんなことになってしまってるんだ?」

部下:「それは・・・」

 

といった具合に、どんどん重たい空気になっていくことはないですか?

最悪なのが、

 

部長:「そんなことだからおまえは××なんだ」

 

と言ったように部下の人格を否定するような発言が出てしまうことです。

もしくは、部長がそうは思っていなくても、部下が自分自身の人格まで否定されてしまったと感じてしまうこともあるかもしれません。

とはいえ、達成できていないKPIがあるのであれば、その原因を解明して解決していかねばなりません。

 

そこで、チームとしてのルールを明確にしましょう。

 

・チーム全体の目標を達成するためには、未達成のKPIや進捗が悪いKPIについては明らかにした上でその原因は詰めて考え、その上で最善のアクションプランを考えて行動していく必要がある。

・原因は詰めるものの、その担当者を責めるわけでは決してない。

 

ということを、ルールという形でしっかりと共通認識しておいた方がいいでしょう。

 

さらに、詰めていく時には、その発言の枕言葉として「ルール通り、今から原因を詰めていくけど、決してあなたを責めるわけではなく、より良い状態を一緒に作るために、その原因を明らかにして一緒に改善プランを考えていこう」という言葉をかけてあげるとなお良いでしょう。

 

そうすることで、見て見ないフリをするわけでもなく、人を責めるわけでもなく、健全な状態で、チームとしてのPDCAを回しやすくなるはずです。

 

もう一つ注意点があります。

 

チームメンバーが、KPIマネジメントに対してネガティブな感情(面倒くさい、また責められる、やっても意味がない、何でやる必要があるのかわからない等)を持ってしまうと、建設的な議論ができないどころか、

 

・そもそも正しいKPIデータを報告(入力)しない

・報告(入力)期限を守らない

 

ということになりがちです。

そうなるとマネジメントできるものもできなくなってしまいます。

 

これは、チームメンバーがそういったネガティブな感情を持っていなくても起こります。

つまり、「データの入力が正確ではない(または遅い)」という問題です。

 

これはどんなシステムを使っていても起こる問題です。

そのシステムがどれだけUI(ユーザーインターフェース)が優れていて扱いやすいものであったとしても起こりえます。

 

これはもはや、「組織の文化」の問題ではないでしょうか。

 

「正しく期限までにデータを入力し、それをマネジメントにも活かす」という文化を作る必要があるでしょう。

組織としての常識として習慣化して、「それが当たり前だよね」という状態にするということです。

しかし、「文化をつくる」のは大変なことだし、時間がかかります。

経営者自らがそこにコミットし、全員でその重要性や目的などの共通認識を持ち、1日でも早く取り掛かりましょう。

 

KPIを単なる数値ではなく、「意味や意図を持った数値」としてみんなで共通認識を持つことができれば、組織やチームを同じ方向に向かわせやすくなります。

KPIマネジメントを活用して、組織やチームのアクションをつないでいくためには、チーム全員が、1つ1つのKPIがどのようなメカニズム・関係性で連鎖していくのかを理解している必要があります。

 

これにはKPIツリーを作ることが最適です。

KPIツリーを作ることによって、

 

・自分たちが関わっているビジネスの全体像がどのようになっていて、

・その中ではどういったKPIが重要になっていて、

・それぞれのKPIの関係性がどうなっているのか、

・その中で自分が日々追っているKPIはどういった位置付けにあるのか、

 

を理解しやすくなります。

このKPIツリーで言えば、

 

・利益は当然、売上から費用を引いて計算できる。

・売上は、顧客単価と顧客数で成り立っているから、売上をあげようと思えばそのどちらかをあげる必要がある。

・顧客単価をコントロールするのはいまのところ難しいので、顧客数をあげていく必要がある。

・顧客数は、成約率と商談数で成り立っているから、顧客数を増やすには、そのどちらか(もしくはどちらも)をあげる必要がある。

・商談数は、アポ率とテレアポ数で成り立っているから、商談数を増やすには、そのどちらか(もしくはどちらも)をあげる必要がある。

 

という具合に理解しやすくなります。

 

しかも、理解しやすくなるだけでなく、全員が同じ認識を持ちやすくなる、というのがとても重要です。

 

このようにKPIのメカニズムや関係性を理解したら、今度は、「ストーリー」の共通認識を持ちましょう。

 

・利益の目標は25だ。

・そのためには、売上は40獲得して、費用は15に抑える必要がある。

・売上40を達成するためには、顧客単価はいまのところ10なので、顧客数を4にする必要がある。

・顧客数4を達成するためには、一旦成約率を直近平均の20%とすれば、商談数を20作らないといけない。

・商談数を20作るためには、当面、アポ率1%をあげるのも難しそうなので、まずはテレアポ数2,000を達成しよう。

 

というように、「KPIの上に数値でストーリーが乗っている」状態を作りましょう。

ただ単に「KPIや数字が並んでいる」状態よりも、圧倒的に、直感的に理解しやすく共通認識も持ちやすくなります。

チームで仕事をする上では、この「共通認識」が本当に重要ですよね。

 

重要なので繰り返しますが、KPIが「無味乾燥な数値の羅列」のままなら、それは単なる「実績報告」で終わってしまいがちです。

しかし、KPIを過去ではなく未来を見据えて活動するための「ロジック」として捉えることができれば、KPIは「ビジネス上の課題を解決するストーリー」へと変わるはずです。

 

執筆者

広瀬好伸
株式会社ビーワンカレッジ 代表取締役社長

プロフィール

京都大学経済学部卒、あずさ監査法⼈にてIPO準備や銀⾏監査に従事。
起業後、公認会計⼠・税理⼠として、上場企業役員、IPO、M&A、企業再⽣、社外CFOなどを通じて600社以上の事業に関わる。

公認会計士、 IPOコンサルタント、社外役員として計4度の上場を経験。
株式会社i-plug社外役員、株式会社NATTY SWANKY社外役員。

成長スピードの早い企業におけるKPIマネジメントやファイナンス、上場準備や上場後の予算管理精度の高度化といった経験を踏まえ、KPIのスペシャリストとして、日本初のKPIマネジメント特化SaaS「Scale Cloud」の開発・提供やコンサルティングに注力。
従来のマネジメント手法を飛躍的に進化させ、企業の事業拡大に貢献中。

講演実績

株式会社セールスフォース・ドットコム、株式会社ストライク、株式会社プロネクサス、株式会社i-plug、株式会社識学、株式会社ZUU、株式会社あしたのチーム、ジャフコグループ株式会社、トビラシステムズ株式会社、株式会社琉球アスティーダスポーツクラブなどの主催セミナー、日本スタートアップ支援協会などの経営者団体、HRカンファレンスなどのカンファレンス、関西フューチャーサミットなどのスタートアップイベントなどにおける講演やピッチも実績多数。

論文

『経営指標とKPI の融合による意思決定と行動の全体最適化』(人工知能学会 知識流通ネットワーク研究会)

特許

「組織の経営指標情報を、経営判断に関する項目に細分化し、項目同士の関連性を見つけて順位付けし、経営に重要な項目を見つけ出せる経営支援システム」(特許第6842627号)

アクセラレーションプログラム

OIH(大阪イノベーションハブ)を拠点として、有限責任監査法人トーマツ大阪事務所が運営するシードアクセラレーションプログラム「OSAP」採択。

取材実績

日本経済新聞、日経産業新聞、フジサンケイビジネスアイ、週刊ダイヤモンド、Startup Times、KANSAI STARTUP NEWSなど。

著書

『飲食店経営成功バイブル 1店舗から多店舗展開 23の失敗事例から学ぶ「お金」の壁の乗り越え方』(合同フォレスト)

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