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メルカリの秀逸なビジネスモデルをKPIで紐解く

2021.03.23
メルカリの秀逸なビジネスモデルをKPIで紐解く

メルカリの主要KPI

メルカリは、メルカリJP、メルカリUS、メルペイの3事業を展開しています。

このうち、メルペイJPの2021年6月期第2四半期における主要KPIは、

  • 「GMV」(Gross Merchandize Volume)は1,970億円となり前期比28%増で拡大。
  • 「MAU」(Monthly Active Users)も1,802万人となり前期比17%増で拡大。

となっています。

これだけでもメルカリの強さを計り知ることができますが、今回は「隠れたメルカリの強さ」について書いてみたいと思います。

購入者がメルカリで商品を購入すると、その代金は購入後数日でメルカリに入金されます。それからメルカリの手数料を差し引いた残りが出品者に支払われます。

この「購入者からメルカリに入金があってから出品者に支払われるまで、メルカリにプールされているお金」は、出品者に支払われるまでは貸借対照表上、預り金として計上され、これが2021年6月期第2四半期末時点では101,765百万円あります。

 

主要KPI以外に実はすごいKPI

ここで、Amazonの資金KPIが本当にすごい!でも書いた「資金KPI」について簡単に振り返りたいと思います。

資金KPIの1つに、「キャッシュ・コンバージョン・サイクル(CCC)」と呼ばれるものがあります。これは、「会社が原材料や商品の仕入などへ現金を投入して在庫になり、それを販売してから最終的に現金化されるまでの日数」を示した指標です。このCCCは小さい方ほど資金効率は良いといえます。

 

このCCCは一般的には以下のように計算されます。

 

CCC=売上債権回転日数+棚卸資産回転日数-仕入債務回転日数

 

売上債権回転日数とは、売上が発生してから実際に代金を受け取るまでの期間です。

棚卸資産回転日数とは、仕入れた商品等が販売されるまでの期間で、在庫保を保有している期間です。

仕入債務回転日数とは、商品等を仕入れてからその代金を支払うまでの期間です。

 

たとえば、

 

  • 商品を仕入れ、その30日後に代金を支払った=仕入債務回転日数30日
  • 仕入れた商品は仕入れて10日後に売れた=棚卸資産回転日数10日
  • 売れた代金は販売後40日後に支払われた=売上債権回転日数40日

 

このときのCCCは以下のようなります。

 

CCC=40日+10日-30日=20日

 

仕入れの代金を支払ってから、販売による売上代金の入金までに20日かかることになります。 

メルカリにおいては、特に注目したいのは、先ほどの預り金(購入者からメルカリに入金があってから出品者に支払われるまで、メルカリにプールされているお金)です。

これは、このCCCにあてはめれば仕入債務回転期間に置き換えて考えることができます。すごく簡便的に概算で計算すると、預り金の回転日数は約45日になります。

つまり、取引成立後、購入者からは数日以内でメルカリに入金される一方で、そのお金をメルカリが出品者に対して支払うのは約45日後になるということです。

これは「運転資本がマイナス」の状態といいます。

 

たとえば、メルカリでは、

① 1月に出品者が代金100のものを出品する

② 2月に購入者が100で購入する

③ 2月末に購入者が100の購入代金をメルカリに振り込む

④ 3月末に出品者が売上代金90(メルカリの手数料10を控除した後の金額)を自分の口座に振り替える

といった状態になっているため、メルカリには2月末から3月末の1ヶ月間、100のキャッシュが手元にたまることになります。

 

この状態になる原因は、

 

取引成立してからは、商品発送→購入者受取評価→出品者振込申請→売上金振込という流れになります。

この取引成立から出品者へ売上金を振込までの期間が最低でも1週間以上かかるので、その間はメルカリの元にキャッシュがたまっている状態になります。

つまり、上記の②から④の期間は最低でも1週間以上は必要になるということで、その間はメルカリの元にキャッシュがたまります。

 

出品者が販売して得た売上を出金するとき、出金額が1万円以上の場合は無料ですが、1万円未満の場合は振込手数料210円が必要なので、出品者にとっては売上が1万円以上貯まるまで出金を待った方がお得になります。

つまり、上記の④で自分の口座に振り替えずに、当面そのままメルカリの口座に置いておくということが起こりえるので、メルカリにとっては出品者への支払いまでの期間(③から④の期間)が長くなります。

 

出品者が売上金をメルカリ内での購入代金に充てることができるため、出品者は「売上金をメルカリ内に残しておいて今度何か買おう」という心理が働き、メルカリにとっては出品者への支払いまでの期間(③から④の期間)が長くなります。

つまり、上記2の原因と合わせて、仮に上記③の1週間後に出品者が売上代金の引き出しが可能になったとしても、引き出さずに④までメルカリの口座にその売上代金を置いているということです。

結果として、その間、メルカリの元にキャッシュがたまります。

 

といったことがあげられ、

結果として先ほどの「取引成立後、購入者からは数日以内でメルカリに入金される一方で、そのお金をメルカリが出品者に対して支払うまでの期間」が長くなっています。

 

事業拡大すればするほどお金が増える

通常、仕入代金を支払って在庫になり、その在庫が売れて売上代金が入金されるので、売上代金が入金されるよりも仕入代金を支払う方が早くなります。

そうなるとその仕入代金を支払うための資金(これを運転資金と言います)を銀行から融資を受けるなどして確保しなければなりません。

たとえば、

  • 1月に100を仕入れる
  • 2月末に100の仕入代金を支払う
  • 3月に150で売れる
  • 3月末に150の売上金の入金がある

 

このケースであれば、先に2月末に100の支払があるので、(仮に手元キャッシュがないとすれば)100を借りてこないと支払えません。

また事業規模が拡大すればするほど多額の仕入代金が必要になるので、多額の運転資金が必要になり借入もどんどん増えていきます。

 

上記の例であれば100の借入ですみますが、事業規模が拡大して10倍の1,000の仕入代金が必要になってくれば、当然に10倍の1,000の借入が必要になってきます。

この借入ができる限度が、事業規模を拡大する上での大きな足かせになってしまう可能性が高いです。

 

しかし、メルカリのように「運転資本がマイナス」の状態は、仕入代金を支払う前に売上代金が入金されるので、売上代金で仕入代金をまかなうことができるため、運転資金の融資が不要になります。

 

たとえば、

  • 1月に100を仕入れる
  • 2月に150で売れる
  • 2月末に150の売上金の入金がある
  • 3月末に100の仕入代金を支払う

 

という状態で、借入をしなくても、先に売上金150が入ってくるので、そのお金で仕入代金100を支払えます。

 

また、売上代金が入金されてから仕入代金を支払うまでの期間は、売上代金が手元キャッシュとして残るので、事業規模が拡大すればするほど手元キャッシュは潤沢になっていきます。

たとえば、上記の例であれば、2月末に150の入金があるので、3月末に100の支払いがあるまでの1ヶ月間は150が手元キャッシュとして残りますし、また、事業規模が10倍になれば1,500のキャッシュが1ヶ月間手元に残ることになります。

 

メルカリでは、こうして生まれたキャッシュをどんどん広告宣伝等に使って事業拡大していけるので、事業拡大する上で借入の限度額が足かせになるようなことになることなく、事業規模を拡大していけます。

そして、仮に利益はが赤字だったとしても、事業が拡大して売上が増えれば増えるほど、営業キャッシュ・フローはどんどん増えていくビジネスモデルになっています。

 

顧客から預かった預金を運用することで利益を生み出していく銀行のビジネスと似ていて、メルカリは、顧客からお金が引き出されるまでの期間が前述のとおり約45日間と長いので、そのお金を使って事業運営することができるのです。

 

資金KPIは重要ですね、というお話でした。

ビジネスモデルを創るときには、こういった視点を組み込むといいですね。