事業計画の実行に必要なKPIとは|設定方法などを詳しく解説

2022.03.19
事業計画の実行に必要なKPIとは|設定方法などを詳しく解説

企業の経営者が作っておくべきものの1つが事業計画です。事業計画を立てるのは簡単ではありませんが、作ることで大きなメリットが得られます。

 

今回は事業計画とは何かについて説明しながら、事業計画を立てるメリットや作成方法、事業計画を作るために必要となるKPIについて解説します。事業計画を立案したいと思っている人は、ぜひ参考にしてみてください。

事業計画とは

事業計画とは、その事業そのものの概要(コンセプト・アイディアなど)やマーケットに関する調査(外部環境・ターゲットユーザーなど)、またそのマーケティング手法や収支計画など、事業を推進するための背景や未来の予測を分かりやすく文書や資料にまとめたものです。

事業計画を立てるメリット

事業計画は一朝一夕で作れるものではありません。緻密で納得度の高い事業計画を立てるためには、相応の準備や調査など時間が必要になります。そんな時間をかけてまで事業計画を作るメリットは、何なのでしょうか。ここでは、事業計画を立てるメリットを3つ紹介していきます。

 

  • 自分の思考を可視化できる
  • 従業員と方向性を共有できる
  • 資金調達がしやすくなる

 

それぞれのメリットについて見ていきましょう。

自分の思考を可視化できる

まず1つは、事業計画を作る経営者自身の思考を可視化できるという点です。いくら壮大で画期的なアイディアや将来の予測があっても、それが頭の中にしかなかったら丁寧に進捗を確認して洗練させていくのは難しいでしょう。

 

自分の思考を可視化して手元に置いておくことで、実際に計画していた収支を順調に達成できているかを確認できて、1年前に考えたことを見つめ直して事業の方向性を考え直すといったこともやりやすいです。

従業員と方向性を共有できる

事業計画には、従業員と事業の方向性を共有できるというメリットもあります。従業員が経営者と同じ方向を向くというのは、非常に重要なことです。

 

経営者の頭の中にしか事業の向かう先がない状態だと、ゴールから逆算して目の前のタスクをこなすのが難しくなってきます。また、ゴールが分からないと社員は目標がない状態で進まなければいけないため、気付かない間に経営者と従業員の間で会社や事業が目指す先がずれていたなんてことにもなりかねません。

 

従業員が増えれば増えるほど、事業計画を可視化してそれを全従業員に共有することが重要になってきます。

資金調達がしやすくなる

事業企画を立てる最も重要なメリットは、この「資金調達がしやすくなる」という点です。資金調達を検討し始めるのをきっかけに事業計画を作り始める経営者は多いでしょう。

 

資金調達をする際に、借入をするケースでも株式を発行して出資してもらうケースでも、その資金を提供する側が最も気にするのは、提供した資金が回収できるのか、それ以上のリターンが得られるのか、という点です。

 

高い精度で売上・収支の予測が立てられていれば、資金回収の可否やリターンを明確に示せるため、金融機関や投資家に資金を提供してもらいやすくなるでしょう。

 

そのために必要なのが事業計画です。売上や収支を予測するために、どういった事業で、なぜ成功する確率が高く、どのくらい成功するかを事業計画にまとめ、金融機関や投資家などに提供します。

事業計画書の作成方法

事業計画書に決まったテンプレートがあるわけではありませんが、一般的に事業計画書に記載されているものをまとめると以下のようになります。

 

  • 企業概要(ビジョン・ミッション・設立日など)
  • 創業者・経営陣のプロフィール
  • 事業内容
  • 事業の強み・特徴
  • 市場環境・競合情報
  • 営業・販売・マーケティング戦略
  • 生産方法・仕入れ先
  • 売上・収支計画
  • 資金調達計画

 

基本的には、経営者が頭の中に描いている事業そのものやその戦略について分かりやすく言語化していけば良いのですが、特に重要なのが売上・収支計画の部分です。なぜなら、売上・収支計画が資金を提供する側からとってみれば最も気にする内容であり、この精度こそが資金提供を意思決定できるかを左右するからです。

 

企業概要から始まり、生産方法・仕入れ先に至る前段の内容のほぼ大半がこの売上・収支計画の妥当性・正確性を担保するために記載している項目でもあります。一方で、売上・収支計画は当然未来を予測するものなので、単なる事実を表現するよりも難しいです。

この難易度の高い売上・収支計画を立てる上で必要不可欠なのがKPIです。ここからは事業計画を作る上で必ず設定すべきKPIについて解説していきます。

事業計画の実行にはKPIが大切

KPIはKey Performance Indicatorsの略で、日本語では「重要業績評価指標」と訳します。簡単に説明すると、企業や組織が達成すべき最終目標に対して、その達成度合いや進捗を評価するための中間指標です。

KGIとの違い

似た言葉にKGIがありますが、こちらはKey Goal Indicatorの略で、日本語では「重要目標達成指標」と訳します。こちらは先ほどのKPIで説明した「最終目標」を表す言葉です。つまり、KGIを達成するために構成される要素がKPIとなります。

 

例えば、ある企業の今期のKGIが売上でその目標が1億円だとします。しかし、売上というKGIだけを見ていても、実際にどう行動すればどのくらい売上になるのか、何をすれば今のペースが改善するのか、などのイメージがあまり浮かばず、目先のアクションに落としにくくなります。

 

そこで、このKGIを分解してKPIにするのです。

 

売上を作るためにはお客様に製品を購入していただく必要があるので、売上は購入数 × 購買単価で構成されます。購入数や購入単価が上がれば売上もアップするため、購入数や購入単価が売上というKGIにおけるKPIになるのです。

 

これらのKPIをさらに分割すると、より詳細なKPIを設定できます。購入数は、購入を検討してくれている見込み顧客数×購入率のような形にも分解できますし、もしくは商談数×契約数、店舗来店数×購入率など、商材に合わせた分解が可能です。

 

このように、最終的なゴールであるKGIから分解してKPIを設定していくことで、KGIにたどり着くまでの道筋や必要なタスクが明確になります。

事業計画を成功させるためにKPIが必要な理由

事業の成功には、KPIの設定が不可欠です。なぜなら、事業の成功≒KGIとすると、このKGIはたくさんの行動の結果として得られる指標であり、その指標が得られるには時間がかかるからです。

 

今日どのくらい行動して、その行動からどういった成果を得る必要があるのか明確になっていなければ、数ヶ月後や1年・数年後に事業計画が達成できているかは博打と変わりません。

 

事業計画から逆算して、今年・今四半期・今月・今週・今日の行動とその行動によるKPIが明確になって初めて、事業計画達成への道筋が明確になり、事業計画そのものの妥当性や正確性が担保されるのです。事業計画を成功させるためにKPIが必要な理由について、さらに詳しく見ていきましょう。

 

計画を進めるために必要なタスクが明確になる

KPIを設定すると、直近でやらなければならないタスクが明確になります。例えば、売上1億円というKGIだけがあっても、今日どのくらいお客様にアプローチすればいいか明確にはなりません。しかし、売上から逆算されたアプローチ数というKPIが明確になっていることで、今日は10人のお客様にアプローチしなければならないんだな、といった目標が把握しやすく、タスクが明確になります。

計画通りに進んでいるかの指標になる

タスクが明確になると、それが順調に進んでいるのかも判断しやすくなります。今日10人にアプローチしなければいけなかったのに、終わってみたら8人にしかアプローチできていなかったとなると、翌日以降に2人分のアプローチを取り返さなければいけません。

 

事業計画を達成するために、今の行動や成果が足りているのか、足りていなければどのくらい足りていなくて巻き返しは可能なのか、これらを明確にするのもKPIの役割です。

計画の改善・見直しにもつながる

進捗が追えるようになれば、計画の改善や見直しもできるようになります。いくらロジックを積み上げて正確性の高い事業計画を立てたとしても、何が起こるか100%予測することはできないので、当然計画が妥当ではなかったというシーンも起こり得ます。

 

しかし、KPIがなければ売上という最終結果が出るまでこの見直しの必要性に気付けませんし、なぜ見直しが必要なのかも分かりません。KPIに分解できていることで、どこが非現実的な計画で、どう改善・見直しする必要があるのかが明確になります。

KPIの設定方法

KPIが必要な理由が分かったところで、KPIの設定方法について説明します。先ほども解説した通り、KPIは基本的にKGIを構成する要素を分解していくことで設定することが可能です。

 

例えば、旅館の売上をKGIとして考えてみましょう。

 

旅館の売上は、宿泊客数(もしくは部屋数)× 宿泊単価で決まります。これが最上部のKPIとなりますが、このままではまだ目先のタスクになるイメージが湧きません。ここから、さらにKPIを分解していきます。

 

まずは、宿泊客数を増やすために何ができるかを考えましょう。

 

「旅館・ホテル予約サイトで当旅館を予約してくれる人を増やす」、「公式サイトから当旅館を予約してくれる人を増やす」などの場合、予約サイト経由の予約数と公式サイト経由の予約数が次のKPIです。さらには、各サイトの訪問数と、訪問後の予約率がもう一段階分解したKPIといえるでしょう。

 

次に、宿泊単価を構成するKPIについて検討していきます。宿泊単価を判断するために実際にお客様や世間の声を聞きたいというのであれば、まずはお客様にアンケートなどを取るのも良いでしょう。お客様の声を聞いて、「部屋のグレードや料理のグレード、温泉の質などのどの部分が旅館に払う金額を左右しているのか」が明確になれば、売上単価のアップとともにそれらのサービスなどの向上をKPIとして設定するのもおすすめです。

 

このように、KPIは最終的なKGIから一段ずつ構成要素を分解して作っていきます。構成要素を分解するためのコツは、どうやったら数値が上がるかを考える際にイメージが湧かなかったら、お客様の声を拾ってみるのも良いでしょう。

事業計画の達成のために活用されやすいKPIの指標

何をKGIと置くかやビジネスモデルによってKPIは大きく異なりますが、ここでは事業計画でよく目にするKPIについていくつか紹介します。KPIの設定にお悩みの方は、ぜひ参考にしてみてください。

顧客獲得コスト(CAC)

1つ目はCAC(Customer Acquisition Cost)、日本語で顧客獲得コストです。1人の顧客を獲得するためにかかった費用のことで、先の例でを用いると、1人の宿泊客を獲得するためにかけた費用となります。毎月広告に100万円使っていて、そこから100人の宿泊客を獲得しているのであれば、CACは1万円となります。

顧客生涯価値(LTV)

次にLTV(Life Time Value)、顧客生涯価値も頻出するKPIです。これは1人の顧客が生涯にわたって提供してくれる金額の総計を表します。これは旅館の例だと考え方が難しいので、SaaS企業を例に紹介していきましょう。

 

1人の顧客に継続的にサービスを利用してもらうサブスクリプション型のビジネスを提供しているSaaS企業では、1人の顧客がどのくらい長くサービスを利用してくれるのかが重要です。そのため、1人あたりがどのくらい長くサービスを利用してくれていて、その間に支払ってくれた費用の総額はいくらになるのかを把握するために、LTVが必要とされています。

営業売上

営業売上とは、特定期間に実際に契約・購入された金額の総計です。LTVは将来的に獲得できる1人あたりの金額を加味しますが、売上は特定期で実際に顧客から得た(得るであろう)代金を指します。

まとめ

事業計画は、経営者・従業員・資金提供者の三方にとってメリットのあるものです。そして、事業計画の根幹を成すものは売上・収支計画であり、この計画の妥当性・正確性を担保するためにKPIが重要となります。

 

事業計画の達成のために活用されるKPIについてさらに詳しく知りたい方は、下記の資料を参考にしてみてください。

 

監修者

広瀬好伸
株式会社ビーワンカレッジ 代表取締役社長

プロフィール

京都大学経済学部卒、あずさ監査法⼈にてIPO準備や銀⾏監査に従事。
起業後、公認会計⼠・税理⼠として、上場企業役員、IPO、M&A、企業再⽣、社外CFOなどを通じて600社以上の事業に関わる。

公認会計士、 IPOコンサルタント、社外役員として計4度の上場を経験。
株式会社i-plug社外役員、株式会社NATTY SWANKY社外役員。

成長スピードの早い企業におけるKPIマネジメントやファイナンス、上場準備や上場後の予算管理精度の高度化といった経験を踏まえ、KPIのスペシャリストとして、日本初のKPIマネジメント特化SaaS「Scale Cloud」の開発・提供やコンサルティングに注力。
従来のマネジメント手法を飛躍的に進化させ、企業の事業拡大に貢献中。

講演実績

株式会社セールスフォース・ドットコム、株式会社ストライク、株式会社プロネクサス、株式会社i-plug、株式会社識学、株式会社ZUU、株式会社あしたのチーム、ジャフコグループ株式会社、トビラシステムズ株式会社、株式会社琉球アスティーダスポーツクラブなどの主催セミナー、日本スタートアップ支援協会などの経営者団体、HRカンファレンスなどのカンファレンス、関西フューチャーサミットなどのスタートアップイベントなどにおける講演やピッチも実績多数。

論文

『経営指標とKPI の融合による意思決定と行動の全体最適化』(人工知能学会 知識流通ネットワーク研究会)

特許

「組織の経営指標情報を、経営判断に関する項目に細分化し、項目同士の関連性を見つけて順位付けし、経営に重要な項目を見つけ出せる経営支援システム」(特許第6842627号)

アクセラレーションプログラム

OIH(大阪イノベーションハブ)を拠点として、有限責任監査法人トーマツ大阪事務所が運営するシードアクセラレーションプログラム「OSAP」採択。

取材実績

日本経済新聞、日経産業新聞、フジサンケイビジネスアイ、週刊ダイヤモンド、Startup Times、KANSAI STARTUP NEWSなど。

著書

『飲食店経営成功バイブル 1店舗から多店舗展開 23の失敗事例から学ぶ「お金」の壁の乗り越え方』(合同フォレスト)

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