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実践的なプロセスKPIの基本を5つの事例で解説

2021.02.05
実践的なプロセスKPIの基本を5つの事例で解説

業績目標の達成のためには、業務プロセスの正しい進捗管理が必要ですが、その進捗管理の中で分析と改善を繰り返すにはKPIを用いるのが有効です。
目標を達成するために、誰が、いつまでに、どのように、どれくらいの量のプロセスを踏むか、数値化して具体的に設定します。日常のタスクに具体的指標がつくことにより、目標に至るまでにやるべきことが誰の目から見ても明らかな状態になります。

ここでは、KPIツリーとは何か、また、KPIツリーを作成することで、何ができるようになるのかをKPIツリーに関連する用語と合わせ説明していきます。

 

1.  用語解説と各種プロセスKPI

 

KGI(Key Goal Indicator)

最終的な業績目標を定量的に評価するための指標です。KGIは、より事業全体のレベルで最終的に到達すべきゴールのことなので、「テレアポの件数を増やす」や「リードを増やすためにセミナーの開催数を増やす」というゴールまでの過程をKGIと呼ぶことはしません。一般的には、経営指標である、売上高利益ROICキャッシュ・フローといったものがKGIとして適しています。

 

KPI(Key Performance Indicator)

KGIを達成するための業務プロセスが適切に実施されているかどうか、その達成度合いを定量的に可視化してモニタリングするための指標です。例えば「売上」がKGIの場合、その売上を達成するための要因となる「アクティブユーザー」や「課金率」といったものがKPIとなります。KPIはKGIの達成までの中間目標です。

 

KPI管理は営業部や生産部などの直接部門だけでなく、目標設定が定量化しにくい人事・労務・総務といった間接部門にも導入しやすい管理方法です。

たとえば、「採用人数」をKGIに設定した際、具体的な施策として「求人応募のチャネル数の増加」という施策を考えたとします。この施策がうまくいっているかどうかを定量的に確認するために、チャネル毎にKPIとして「求人数」や「平均訪問者数」、「成約率(応募数)」を設定し、どのチャネルが効果的かどうかを検証し改善していきます。

KGIを達成するための業務プロセスは会社によってさまざまですが、そのプロセスごとのKPIとしては、たとえば次のようなものがあります。

 

a. 営業プロセスのKPI

 

営業プロセスのKPI設定としては、新規顧客の獲得件数の増加や既存顧客への売上増に向けたKPIが代表的な指標となります。KPIを設定することによって、目標達成/未達の要因は、アポイントの件数が少ないのか、それとも成約率が悪いのか、あるいは1人が担当している顧客数が多すぎて何度も訪問できないことが原因なのかといったように、どこに課題があって何を改善すべきなのかがはっきりします。

 

 

会社によっては、テレアポ数のスキル改善のために、KPIを架電数→応答率→受付窓口突破率→担当部署接触率→アポイント取得率といったように細かく設定し、そもそも担当部署に取り次いでもらう確率が低いのか、また、担当部署へ有効なトークができていないからアポイント取得まで行っていないのかといったように、何がボトルネックとなっているのかがわかるようすることで担当者ごとに改善策を立てていくといったような事例もあります。

b. WEBマーケティングプロセスのKPI

 

どういったページ、あるいはコンテンツが好まれているのか、どういった経由で流入があったか、といった点をKPIで管理していくことで、より効率的効果的に売上につながるWebマーケティングの改善が可能になります。

 

 

 

c. 製造プロセスのKPI

 

製造プロセスのKPIは、主に製造現場を見える化する目的で使われます。製造現場の可視化はトライ&エラーの地道な作業でもあるので、できるだけ短期で測定でき継続的にデータがとれる項目がオススメです。

大きく分けると2種類のKPIがあります。

1つは生産品目(モデル・アイテム)毎のKPIです。原価率や不良品率、製造リードタイム、加工にかかった工数などを計画値と実績値を比較することで課題が見えてきます。

もう1つは、モデルではなく設備や製造ユニット単位での改善につながるKPIもあります。こちらは生産効率性といった指標や、設備をどれだけ効率的に使えているかを示す時間稼働率のようなKPIで測ることができます。

加えて、事故発生件数といったルール厳守やそのためのトレーニングの徹底といった作業環境に関するKPIも、作業状況をリアルタイムでとらえるためには非常に有効です。

d. 人材採用プロセスのKPI

 

 

これらを募集経路ごと、採用プロセスごとに数値で可視化することで、どこに力を入れていくべきかや、必要な予算や人材などが見えるようになります。つまり、自社に興味を持ってもらうため、どのような手段で何人にアプローチできたのか、その結果、何人が書類選考を通過し、何人が採用面接を受けにきたのか、そのうち何人が内定を承諾したのかというように数値管理を行うことによって、何に注力していくべきなのかが明確になります。

e. 店舗オペレーションプロセスのKPI

 

新規顧客数は主に集客施策・プロモーションの結果検証をするために、リピート顧客数は何かしらの形で会員化している顧客に対して再来店施策・プロモーションの結果検証をするために、それぞれ必要なKPIです。

平均購入商品点数の指標は、たとえば、アパレルショップであれば、レジの近くにハンカチやベルト等の小物類を置くことで追加+αの購入を誘導したり、ショップ店員がジャケットを買いに来た顧客に、それに似合うインナーを積極的に進めるというキャンペーンがうまくいっているかというように、施策の効果検証をすることができるようになります。

 

このように、企業活動のあらゆる場面において、KPIを活用したプロセス管理が可能です。

2.  KPI事例

 

次に、KPIの活用に積極的に取り組んでいる企業を見ていきます。

 

 

事例1. くらコーポレーション

 

回転ずしチェーン「無添くら寿司」を展開する「くらコーポレーション」は、鮮度の良い商品を提供するために回転レーンに載せて55分以上経過した商品は廃棄する方針をとっています。この方針と収益性を確保することを目的として、廃棄率を最重要KPIとして設定しました。廃棄率の削減に向け、皿のうえにICチップを入れ、過去の注文履歴や販売データなどを大量に蓄積し、さらにこのデータを現在の来店客の属性や来店からの時間による全体の消費量予測データと組み合わせることで、リアルタイムにレーンに流す皿数や製造するタイミングを管理指示する体制をつくりあげました。これによって、10%程度あった廃棄率を3%まで減らすことに成功したと言われております。

 

事例2. ラコステジャパン

 

ワニマークのポロシャツでなじみの深いラコステジャパンでは、

・店員1時間当たりの平均売上高

・来店客(トラフィック)1人当たりの平均売上高

の2つのKPIを設定することによって、単に店員の時間当たりの売上高を見るのではなく、各店舗の個別の売上特性を踏まえたうえで、店舗ごとに見合った評価を取り入れています。

 

事例3. パーク24

 

カーシェアリングで国内最大手の「パーク24」は入電率をKPIとして設定しています。これは、1回のサービス利用で、顧客から何回利用方法についての問い合わせの電話がかかってくるかを見る指標です。入電率にこだわるのは、「入電率が高いということは、コールセンターに頼らないと困るようなストレスの大きいサービスを提供しているということになる」と考えられるからです。入電率を減らすために、より良いサービスの改善に取り組んでいる結果、顧客満足度の向上につながっています。

 

3.  なぜKPI管理を行う必要があるのか

 

直感や感覚に頼る意思決定から、ロジカルな意思決定へとシフトできるから

経営者の長年の勘や経験にもとづく「感覚的な意思決定」も重要ではありますが、あくまで過去の成功体験がベースとなっており、今後の内外部の環境が変わるにつれ、必ずしもまた同じように成功するとは限りません。成熟した、また下降線をたどっている市場の中で事業を行っている場合にも、これまでと同じ方法では通用しなくなってしまうでしょう。KPIでの管理を行うことにより、データを用い、根拠のある意思決定ができるようになりますし、また、これまで見えてこなかった問題点が浮き彫りになり、新たな打ち手を見つけることができるようになります。さらに、「なぜその意思決定になったのか」を社内外に伝えるときにも、直感や感覚を伝えることが難しいですが、データを用いることによってとても伝わりやすくなります

 

生産性の向上が求められているから

組織の成果を上げるには、高いスキルを持った優秀な人材を確保するのが近道でしょう。しかし、今は人材難に苦しむ企業が大半で、現役世代の減少が進む社会状況を考えると、今後ますます人材の獲得競争が激化することが予想されます。また、コロナ禍の環境下で、業績の見通しも不透明な中では、少しでも今ある経営資源を効率よく利用することが求められます。

これを解決するには、できるだけ業務の無駄を省いて労働力を集中させ、1人当たりの生産性を高めることが重要です。社員の生産性を上げ、業務効率よく業務に取り組むには、適切な指標や制度を設けて組織としてきちんと管理していく必要があります。

 

スピーディーなPDCAが必要になっているから

経済環境の変化が激しい中で、企業経営においてはますますスピーディーな意思決定と行動が必要になってきています。しかし、会計数値などの財務情報は、たとえば、1月の業績数値は2月にならないとわからず、結果論になってしまって1月の月中のマネジメントには使えません。また、たとえば、「売上10億円を目指そう」「営業利益率を2%改善しよう」と言っても、マーケティングの担当者にとってどれくらいのリード数を獲得すればいいのか、営業の担当者にとって何件くらいの商談数と成約数を目指せばいいのか、といった、現場の社員の「行動」にまでひも付きません。さらに、簿記の専門知識がないとしっかりと数字を読み解くこともできません。

そこで、KPIを活用することで、業績目標を達成するために各社員がやるべきこと、そしてその目標値を誰でも理解できるKPIとして可視化して、月中においてはその進捗管理をすることでスピーディーなPDCAが可能になります。

 

4.  KPI管理をする際に重要なこと

 

チーム全員でKPI管理を行う環境づくり

KPI達成のためにはチームメンバー全員が目標に向け前向きに取り組むことができる体制をつくることが大切です。そのため、KPIの管理についても、一部の人だけでなくチーム全体で行っていく必要があります。しかし、現状の業務のみで手一杯のメンバーなどは、KPI管理をするための追加の業務が増えることなどに負担を感じてしまう場合もあるので、このような場合はモチベーション低下にもつながるため注意が必要です。

また、事前にKPI管理の意義や目的、メンバーにとってのメリットなどを共有しておくことも有効です。KPI管理の手順を明確にしておくと、新入社員や中途採用者も難なくKPI管理に取り組め、KPIの達成や最適な目標管理につながりやすくなります。KPI管理を通してメンバーが自分の関わるビジネスの全体の状況や今度のロードマップをしっかりと理解することで当事者意識も高まりますし、権限移譲もしやすくなっていきます。そして、KPIを都度全員で見直し、どうすれば達成できるのか、また、達成率が悪いKPIについては、何が原因なのか、何がボトルネックとなっているのかを明確にし、何をどうすれば達成できるのかというところまで具体的にアクションプランまで落とし込んでいくことによって、前向きに取り組むことができるようになります。

 

KPIの状況を誰でもわかりやすく見える化する

せっかくKPI管理をしたとしても、それがどのように管理されているのか、また進捗状況が見えていない状態だと、設定したきりになってしまい、期待するような効果を得ることは難しいです。各メンバーが常に状況を把握し、進捗や結果を把握して判断・行動できるようにしておく必要があります。

KPI管理を効率的かつ効果的に行うため方法としては、ツールの導入が挙げられます。業界や業務特性に合ったKPIの管理方法がありますが、KPI管理に特化したツールは、KPIをモニタリングするために必要なデータの入力や集計といったKPI管理の業務効率化にも効果があります。

もしKPI管理に対して納得感の低いメンバーがいた場合、KPIが形骸化してしまう恐れがあるため、メンバー全員の納得を得た上で、KPIのモニタリング・目標と進捗の確認できる環境を構築していくことが大切です。また、外部環境や達成状況によって目標の見直しが必要になったり、施策の大幅な変更が発生した場合には、KPIそのものを変える必要があったりと、状況に応じて柔軟に変更ができるようにしておくことが重要となります。

そして、可視化されたKPIの達成率は、誰でも見られる状態になっていることも重要です。チームメンバーに常に最新の情報が共有されていることで、目標達成に向けてチーム一丸で行動していくことが可能になります。

 

継続的にPDCAを回すことで日々改善する

 

KPI管理の実施は、PDCA(Plan:計画、Do:実行、Check:評価、Action:改善)サイクルで行うことが必要です。そして、これを繰り返し続けることで、自分たちに最適なKPIの設定と運用ができるようになります。

KPI管理において一番重要なのが「データの集計」と「分析」です。可視化されたデータをもとに、定期的に振返りと改善の場を設けることが重要です。その中で、「KGIを達成するためのKPIとして適切ではなかった」「実際に運用してみると、実現不可能な数値を設定してしまっていたことがわかった」などの問題点がでてくるかもしれません。その場合は、適切な内容・数値へ改善していきます。この時に気をつけたいのは、施策の立案者や目標未達成への批判ではなく、「どうすれば改善できるか?」をチームメンバー全員で考え、次の改善策につなげていくことです。

KPIのメリットは、施策の結果が出てからではなく、その前段階の実施途中で施策がきちんと機能しているかを確認し、軌道修正を図ることができる点にあります。組織が一丸となってPDCAサイクルをまわし、継続的な改善を繰り返すことで、KGIの達成へと近づきます。

 

実際にKPIツリーの作成に迷っている方は、下記資料をぜひフォーマット代わりにご活用いただけます。

ぜひご覧ください。

 

 

 

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執筆者

広瀬好伸
株式会社ビーワンカレッジ 代表取締役社長

プロフィール

京都大学経済学部卒、あずさ監査法⼈にてIPO準備や銀⾏監査に従事。
起業後、公認会計⼠・税理⼠として、上場企業役員、IPO、M&A、企業再⽣、社外CFOなどを通じて600社以上の事業に関わる。

公認会計士、 IPOコンサルタント、社外役員として計4度の上場を経験。
株式会社i-plug社外役員、株式会社NATTY SWANKY社外役員。

成長スピードの早い企業におけるKPIマネジメントやファイナンス、上場準備や上場後の予算管理精度の高度化といった経験を踏まえ、KPIのスペシャリストとして、日本初のKPIマネジメント特化SaaS「Scale Cloud」の開発・提供やコンサルティングに注力。
従来のマネジメント手法を飛躍的に進化させ、企業の事業拡大に貢献中。

講演実績

株式会社セールスフォース・ドットコム、株式会社ストライク、株式会社プロネクサス、株式会社i-plug、株式会社識学、株式会社ZUU、株式会社あしたのチーム、ジャフコグループ株式会社、トビラシステムズ株式会社、株式会社琉球アスティーダスポーツクラブなどの主催セミナー、日本スタートアップ支援協会などの経営者団体、HRカンファレンスなどのカンファレンス、関西フューチャーサミットなどのスタートアップイベントなどにおける講演やピッチも実績多数。

論文

『経営指標とKPI の融合による意思決定と行動の全体最適化』(人工知能学会 知識流通ネットワーク研究会)

特許

「組織の経営指標情報を、経営判断に関する項目に細分化し、項目同士の関連性を見つけて順位付けし、経営に重要な項目を見つけ出せる経営支援システム」(特許第6842627号)

アクセラレーションプログラム

OIH(大阪イノベーションハブ)を拠点として、有限責任監査法人トーマツ大阪事務所が運営するシードアクセラレーションプログラム「OSAP」採択。

取材実績

日本経済新聞、日経産業新聞、フジサンケイビジネスアイ、週刊ダイヤモンド、Startup Times、KANSAI STARTUP NEWSなど。

著書

『飲食店経営成功バイブル 1店舗から多店舗展開 23の失敗事例から学ぶ「お金」の壁の乗り越え方』(合同フォレスト)

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