R&D比率・G&A比率とは、計算方法やSaaS企業の比率も推移も紹介

2022.02.08
R&D比率・G&A比率とは、計算方法やSaaS企業の比率も推移も紹介

ビジネスにおいて使用されるR&D比率・G&A比率は、SaaS企業にとって重要なものです。しかし、どういったものなのか詳しく知らないという人も少なくないでしょう。

 

R&D比率・G&A比率は、国内では馴染みが薄いですが、海外、特にアメリカのSaaS企業では当たり前に使われているビジネス用語です。

 

この記事では、R&D比率・G&A比率の計算方法からSaaSビジネスの代表格企業の推移まで、詳しく解説していきます。

R&D比率・G&A比率とは

R&D比率・G&A比率について説明する前に、まずはR&D・G&Aとは何を表しているのか知る必要があります。

 

R&DとはReserch&Developmentの略称であり、企業における研究開発のことです。一方でG&Aは、General&Administrativeの略称であり企業における一般管理のことを指します。これらを踏まえた上で、R&D・G&A比率について見ていきましょう。

R&D比率

前述したように、R&Dは日本語で研究開発を意味しています。製造業を始めとする多くの企業で取り組みが実施され、それぞれの事業領域における新たな知見や技術を得て、新しいサービスを生み出すことを目的としています。

 

R&D比率とは、この過程でかかる費用や人材の投資などを含めた研究開発費が、売上高の中でどのくらいかかっているかをパーセンテージで表したもので、売上高研究開発費比率とも呼ばれます。R&D比率が高いほど積極的な研究開発を行っていると判断され、株価にも反映されるのです。企業競争力の向上にも直結するため、R&D比率の向上によって評価が高くなっていくといえるでしょう。

G&A比率

日本語で一般管理のことを指すG&Aは、一般管理費用に加えて、バックオフィス業務を担う従業員の給与などにかかった経費も含まれています。営業利益や営業担当のインセンティブなどは含まれないため、直接売上向上につながる費用ではありません。

 

つまり、G&A比率が高いと、売上を上げる力が不足している、バックオフィスに余分な人員を割いている、一般経費を無駄に使っているということになるため、見直しが必要になるでしょう。

 

よく一緒に使用されるS&M比率とは

R&D比率やG&A比率とよく一緒に使用されるS&Mは、Sales&Marketingの略称です。S&M比率とは、企業における広告宣伝費やセールス・マーケティングにおける人件費がどの程度かかっているかをパーセンテージで示したものになります。

 

自社のサービスや商品を宣伝することで売上が高くなる印象が強いかと思いますが、戦略的に実施しなければ、必ずしも売上に直結するとは限らない、むしろ宣伝コストばかりがかかってしまうという事態にもなりかねないので注意が必要です。

 

実際に、国内のSaaS企業においてS&M比率と売上成長率を比較・分析したところ、関連性が見受けられなかった企業も多数存在するとされています。

販売管理費をR&D・S&M・G&Aの3つに分けて開示するメリット

国内企業の多くは、業績開示時に販売費及び一般管理費を一緒に公開しがちですが、海外SaaS企業ではそれぞれをR&D・S&M・G&Aの3つに分けて開示することが多い傾向です。

 

R&D・S&M・G&Aの3つに分けることによって、研究開発投資を行った意味やセールス・マーケティングの投資方針などを明確にするメリットがあります。

 

経費の内訳をより詳しく把握できるため、数字を通したコミュニケーションの実現にもつながります。国内では、SaaS企業のfreeeなどがこの方法で決算報告書に記載しており、グローバル投資家との適切なコミュニケートで事業拡大に挑戦し続けているようです。

R&D比率とG&A比率の計算方法

ここまでR&D比率とG&A比率について説明してきましたが、実際の計算方法についても見ていきましょう。それぞれの比率は、売上高とR&D・G&Aを用いて計算します。決算報告書に記載されていなくとも、記載されている内容から計算可能な場合もあるため、自分で計算してみるのも良いでしょう。

R&D比率

R&D比率は下記の計算方法で算出します。

 

R&D比率(%)= R&D(研究開発費)÷ 売上高 × 100

 

具体的な数字を用いて考えてみましょう。

 

R&Dが4000億円、売上高が6500億円の場合、R&D比率は次のようになります。

 

4000億円 ÷ 6500億円 × 100 = 66%

 

SaaS企業の場合は、海外投資家とのコミュニケーションを目的としてR&D比率が決算報告書に直接記載されていますが、一般的な企業では記載がないことがほとんどです。SaaS企業でも直接記載されていない場合もあるので、決算報告書内から必要な数字を見て計算しましょう。

 

G&A比率

G&Aは販売管理のことであり、G&A比率とは売上高の中で一般管理費にかかった費用をパーセンテージで算出したものと前述しました。

 

しかし、企業において一般管理費単体で記載されている場合は少なく、決算報告書には「販売費及び一般管理費」という数字で記載されています。これは、営業部門に関する「販売費」と、バックオフィスなどの管理業務でかかった「一般管理費」を厳密に区別するのが難しいため、1つの項目としてまとめて記載されているのです。

 

G&A比率を単体で計算する場合は、下記のようになります。

 

G&A比率(%)= G&A(一般管理費)÷ 売上高 × 100

 

こちらも、R&D比率同様に、具体的な数字で考えてみましょう。

R&Dが1億円、売上高が25億円の場合、G&A比率は次のようになります。

 

1億円 ÷ 25億円 × 100 = 4%

 

R&D比率は一般管理費単体で記載されているケースが少ないので計算が難しいですが、数値を算出したい場合は参考にしてみてください。

SaaS企業のR&D比率の推移

SaaS企業では、米企業を含めた世界中のSaaS企業と同レベルの事業展開、海外投資家とのコミュニケートなどを目的として、R&D比率を決算報告書に記載しているケースが多い傾向です。では実際に、SaaS企業の中でも注目度が高い「freee」と「salsforce」のR&D比率の推移はどのように変化しているのか、詳しく見ていきましょう。

freee

個人から法人まで、ビジネスのスタートから運営までの各成長段階をサポートすることを目指ししているfreee株式会社。会計・人事労務・マイナンバー管理・会社設立・開業における業務効率化や数字の把握・共有を目的とした、クラウドサービス「freee」を開発・展開しています。

 

2019年12月に東証マザーズへの上場を果たしましたが、その2年前からエンジニア採用数増加、サービス機能の拡充など、アグレッシブなR&D投資を行っていたようです。このように、他との差別化を図ったことが国内SaaS企業の中でも急成長を遂げた大きな要因になっていると考えられます。

 

上場後のR&D比率の推移は、2019年6月期が35.9%、2020年6月期が28.4%、2021年6月期が25.6%とやや減少傾向にあり勢いが衰えたように感じますが、2022年6月期では26.3%と再び上昇が見込まれます。

 

salesforce

企業と顧客をつなぐ顧客管理ソリューションを開発提供し、米サンフランシスコに本社を置く株式会社salesforce。マーケティング・営業・コマース・サービスなどをすべての部署で、顧客1人1人の情報を一元管理・共有できる統合顧客関係管理(CMR)プラットフォーム「salceforce」を提供しています。

 

SaaS企業の代表格といっても過言ではない世界最大級のSaaSビジネスですが、ここ数年のR&D比率の推移を見てみるといずれも20%以下であり、上場している他SaaS企業と比較すると低い推移となっているようです。つまり、R&D投資に力を入れるより、S&M投資が多いことが想定できるでしょう。

日本企業がR&D向上のために取り組むべき課題

日本は世界の中で見ても、企業におけるR&D比率が高く、技術や商品開発能力が高いとされてきました。しかし、R&Dへの取り組みを積極的に推進してもデジタル改革で結果を出せない、人材不足、管理不足、スピード感が足りないといった課題が生じている企業も増加しているようです。

 

ここでは、日本企業がR&D向上のために取り組むべき課題について紹介していきます。

デジタル改革で結果を出せない

現在世界中で進んでいるデジタル改革ですが、明確な成果を出すことは難しく、うまくいっていないというのが現状です。国内企業においては、既存の社内システムの変更に手間がかかる、改革に向けて新たなプロセスを踏むことに抵抗がある、必要データの不足など、さまざまな課題が浮き彫りとなっています。そういった課題から、R&Dのデジタル化に向けて戦略を策定する企業が少なくなっているため、今後の取り組みが重要になるでしょう。

ITやデジタル人材不足

多くの企業で新卒・中途採用者問わず、ITやデジタル技術・知見を有する人材を求める傾向が強くなっていますが、実際はかなりの人材不足が問題視され、今後もそれが拡大していくことが危惧されています。

 

これは、IT・デジタル人材が魅力を感じるような開発を行う企業が国内に少なく、こういった分野への関心を有する若手ビジネスパーソンは海外企業への就職・転職を希望する場合が多い、IT・デジタル関連の職業は業務内容が多く長時間働く必要があるにも関わらず給与が低い場合が多いなど、さまざまな要因が挙げられます。

 

R&D比率が高く急成長を遂げているSaaS企業などは、こういった問題解決に向けた働き方改革、IT・デジタル人材が魅力を感じる企業を目指して人材の獲得を推進することで、さらなるR&D向上を目指している傾向です。

 

KPIやプロジェクトの管理不足

企業におけるR&Dには、研究分野の知見を含む技術資産が蓄積されることで他社との差別化を図った独自サービスの開発につなげ、企業競争力の向上に役立つといったメリットが存在します。

 

効果的なKPIやプロジェクトの管理を行うことでこのメリットを最大限感じることが可能ですが、実際にこれを行っている企業は少ないようです。それによって、コストがかかったわりにリターンが少なかった、R&Dが失敗し何の成果も得られなかったといったデメリットばかり感じる企業が多く、R&D向上に向けた大きな課題となっています。

商品やサービスを提供するまでのスピード感が足りない

R&Dを積極的に推進して企業競争力を強くすることは良いことですが、それによって他社の価値を低く見積もり、自社で得た研究成果や生産性のみに目を向けている「自前主義」になってはいけません。

 

少し前まで、国内企業におけるこういった風潮が問題視され、クローズドイノベーションの傾向が強く、それが商品やサービスを提供するまでのスピード感不足につながっていました。

 

しかし、現在はスタートアップやベンチャー、技術コンサルタントといった多様なステークホルダーと協働することで新しいアイデアを創造し、商品やサービスの開発・提供をするべきだという考えが浸透しつつあります。オープンイノベーションな企業が今後も増えていけば、スピード感不足の解消が期待できるでしょう。

SaaS企業のG&A比率の推移

R&A比率の推移や課題を理解したところで、G&A比率の推移を見ていきましょう。日米合わせたSaaS企業のG&A比率の推移を見てみると、上場による管理コストの増加が要因となり、上場2年前から上場年にかけてG&A比率が高くなる傾向が見られます。

 

では、より具体的にどのように推移しているのか、「freee」「Slack」「Dropbox」の3社をピックアップして見ていきましょう。

freee

公開されている決算説明会資料によると、ここ数年のG&A比率は2019年6月期が22.8%、2020年6月期が19.7%、2021年6月期が17.5%と推移しています。徐々に減少傾向にありますが、要因としては、サブスクリプションサービスの売上高が徐々に積みあがっていることを受け、対売上高比率であるG&A比率が下がっていることが考えられます。

Slack

アメリカにジョン社を置き、SaaS型ビジネスチャットツールを開発・運営している「Slack」。日本国内ではソフトバンクグループなどが出資し、パナソニック、メルカリ、Yahoo!、ビズリーチなど大手企業が採用しています。そんなSlackのG&A比率を見てみると、上場年度から遡って2年前から上昇傾向にあり、上昇率は他の米SaaS企業と比較するとやや高いようです。Slackは現在、salesforceに買収されています。

 

Dropbox

インターネット上でフォルダやデータを保管し、持っている端末からアクセス可能なオンラインストレージを開発・提供する「Dropbox」。個人向けサービスから法人向けサービスまで展開し、日本国内でも利用者が多くなっています。

 

そんなDropboxのここ最近のG&A比率を見てみると、上場年から遡って2年前から上昇傾向が見られます。しかし、前述した米SaaS企業Slackほどの上昇率は高くなく、日米を合わせたR&D比率の平均である上場2年前22%、上場1年前22%、上場年23%に概ね沿っているようです。

業績の高いSaaS企業はG&A比率を抑えている

日米のSaaS企業におけるG&A比率推移と直近のG&A比率を見てみると、上場年から遡って2年前~1年前にかけて売上成長率と正の相関が若干見られますが、上場年には負の相関に変化する動きが多くの企業で見られます。

 

これは前述したように上場に向けた管理コスト増加が要因となっていると想定されますが、業績の高いSaaS企業はG&A比率を抑えている傾向が強いようです。G&A比率を抑える代わりに、直接売上を左右するといわれているR&DやS&Mに資金投資しているのです。つまり、G&A比率が増加傾向にあっても売上成長率に直結するとはいえないということになります。

まとめ

ここまでR&D比率・G&A比率について計算方法や、具体的なSaaS企業をピックアップして、それぞれの推移が企業の売上や成長にどのように影響するか、課題を解決し向上に向けた取り組みなどについて詳しく解説してきました。

 

海外のSaaS企業では、決算報告書への記載が当たり前になっている内容ですが、国内ではまだあまり浸透していないのが現状です。しかし、海外投資家とのコミュニケートに役立つ企業競争力が上がる、技術資産が増えるといった多様なメリットが存在するため、覚えておきたい内容といえます。

 

R&D比率・G&A比率についてさらに詳しく知りたい方は、ぜひ下記の資料を参考にしてみてください。
 

監修者

広瀬好伸
株式会社ビーワンカレッジ 代表取締役社長

プロフィール

京都大学経済学部卒、あずさ監査法⼈にてIPO準備や銀⾏監査に従事。
起業後、公認会計⼠・税理⼠として、上場企業役員、IPO、M&A、企業再⽣、社外CFOなどを通じて600社以上の事業に関わる。

公認会計士、 IPOコンサルタント、社外役員として計4度の上場を経験。
株式会社i-plug社外役員、株式会社NATTY SWANKY社外役員。

成長スピードの早い企業におけるKPIマネジメントやファイナンス、上場準備や上場後の予算管理精度の高度化といった経験を踏まえ、KPIのスペシャリストとして、日本初のKPIマネジメント特化SaaS「Scale Cloud」の開発・提供やコンサルティングに注力。
従来のマネジメント手法を飛躍的に進化させ、企業の事業拡大に貢献中。

講演実績

株式会社セールスフォース・ドットコム、株式会社ストライク、株式会社プロネクサス、株式会社i-plug、株式会社識学、株式会社ZUU、株式会社あしたのチーム、ジャフコグループ株式会社、トビラシステムズ株式会社、株式会社琉球アスティーダスポーツクラブなどの主催セミナー、日本スタートアップ支援協会などの経営者団体、HRカンファレンスなどのカンファレンス、関西フューチャーサミットなどのスタートアップイベントなどにおける講演やピッチも実績多数。

論文

『経営指標とKPI の融合による意思決定と行動の全体最適化』(人工知能学会 知識流通ネットワーク研究会)

特許

「組織の経営指標情報を、経営判断に関する項目に細分化し、項目同士の関連性を見つけて順位付けし、経営に重要な項目を見つけ出せる経営支援システム」(特許第6842627号)

アクセラレーションプログラム

OIH(大阪イノベーションハブ)を拠点として、有限責任監査法人トーマツ大阪事務所が運営するシードアクセラレーションプログラム「OSAP」採択。

取材実績

日本経済新聞、日経産業新聞、フジサンケイビジネスアイ、週刊ダイヤモンド、Startup Times、KANSAI STARTUP NEWSなど。

著書

『飲食店経営成功バイブル 1店舗から多店舗展開 23の失敗事例から学ぶ「お金」の壁の乗り越え方』(合同フォレスト)

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