SaaSビジネスで重要なSaaS Magic Numberって何?

2022.04.16
SaaSビジネスで重要なSaaS Magic Numberって何?

SaaSビジネスにおいて重要な指標の1つである「Magic Number」。しかし、Magic Numberについて詳しく知らないという方も多いのではないでしょうか。

 

この記事では、SaaSビジネスにおけるMagic Numberとは何か、Magic Numberが重要とされる理由や算出方法などを詳しく解説していきます。Magic Numberについてしっかりと理解して、ビジネスに生かしていきたいという方は、ぜひ参考にしてみてください。

SaaS Magic Numberとは

SaaSにおけるMagic Numberは、営業やマーケティングにかかるコストに対しての販売効率を指す指標です。これは、企業の成長度合いや企業がどれだけ効率的に営業を進められているのかなどを確認する際に役立ちます。

 

また、SaaSサービスはサブスクリプション型のビジネスなので、顧客が月額を支払ってサービスを利用します。そのため、企業側は営業やマーケティングにかかったコストを時間をかけて回収していくことを前提に、1回の料金は安めに設定する傾向です。顧客獲得のために必要なコストが高くなると、その分回収するまでに時間がかかってしまいます。

 

将来的な利益を考えながら営業やマーケティングの戦略を練るためには、SaaS Magic Numberが必須といえます。

SaaSビジネスでMagic Numberが重要とされる理由

SaaSにはMagic Numberが重要とされていますが、それはなぜなのでしょうか。ここでは、SaaSビジネスでMagic Numberが重要とされる理由を3つ解説していきます。

 

  • 不適切な投資コストを発見できる
  • コストの削減ができる
  • 社内で共通の認識を持てる

 

それぞれの理由について、見ていきましょう。

不適切な投資コストを発見できる

Magic Numberは、効率の良い投資ができているかを判断するために役立ちます。不適切な投資がある場合には、どの時点で発生しているものなのかも把握できるので、セールス設計の見直しなどに活用できるでしょう。

 

「不適切な投資コストを見直したい」「資本効率が良いのか不安」といった悩みを抱えている方は、Magic Numberに注目してみると良いです。

 

コストの削減ができる

不適切な投資コストを発見できると同時に、コストの削減にもつながります。これは、不適切な投資コストの発見によって無駄を削減できるだけでなく、収益と顧客獲得にかかるコストのバランスを確認しながら、営業・マーケティングの貢献度合いを確認できるのが理由です。

 

営業・マーケティングがどれだけ貢献できているか、コストとのバランスを考えて貢献度合いが足りていない場合にはどのような改善が必要なのかを判断して、貢献度合いのアップにつなげられます。

社内で共通の認識を持てる

Magic Numberで販売効率を数値化することで、社内全体で具体的な共通指標ができます。「営業効率が悪いので改善してください」といわれても、社員はどこを改善すれば良いのか分からず、全員バラバラの方向性に進んでしまう可能性があります。また、改善方法が分からないと、実行につながらないケースも考えられるでしょう。

 

しかし、Magic Numberで販売効率を数値化して、どこが問題なのか、どのくらい貢献度合いが足りていないのかが明確になれば、社員も行うべきタスクが分かりやすくなります。その結果、全員が同じ方向性で改善を進められるのです。改善したことによって数値が変化すれば、社員のモチベーションの向上にもつながります。

SaaS Magic Numberの算出方法や目安は?

SaaS事業でMagic Numberが重要なことはお分かりいただけたかと思います。では、Magic Numberはどのように計算すれば良いのでしょうか。ここでは、Magic Numberの算出方法と目安について解説していきます。Magic Numberを指標にしていきたいとお考えの方は、ぜひご覧ください。

SaaS Magic Numberの算出方法

Magic Numberの算出方法は下記の通りです。

SaaS Magic Number = (今四半期の経常収益 – 前四半期の経常収益) × 4 / 前四半期の営業マーケティングコスト

例えば、今四半期の経常収益が1200万獲得して、前四半期の収益が1000万円だったとします。さらに、前四半期の営業マーケティングコストが400万円だった場合、下記のような計算式になります。

(1200 – 1000)× 4 ÷ 400 = 2

今回は計算しやすい数値で設定しましたが、実際には小数点以下に続く数値になることが多いでしょう。このように算出された数値から、収益を上げるためには営業マーケティングコストをどのくらい減らさなければいけないのかなどの判断が可能になるのです。

経常収益とは

経常収益は、企業が得た収益や売上のことを指します。経常利益とよく間違えられますが、経常収益から経常費用を差し引いたのが経常利益です。違う言葉なので、混同しないように注意してください。

 

Magic Numberの計算に使用するのは収益のほうなので、企業が得た収益や売上をそのまま当てはめて計算すれば良いです。この数値を間違えると、結果が大きく変わってしまいます。計算をする際には、経常収益と経常利益の違いに気を付けてください。

SaaS Magic Numberの目安となる数値

Magic Numberを計算したけれど、この数値が良いのか悪いのか分からないという人もいますよね。SaaS Magic Numberの目安としての数値は、下記の通りです。

0.75未満 営業・マーケティングプロセスに問題がある可能性が高い。

著しく数値が低い場合には改善が必要。

0.75〜1 現状で問題はない。

さらに収益を上げるための新たな施策を検討する段階。

1以上 安定して収益を得られている。

営業・マーケティングに投資して、顧客獲得のために新たな施策を実行すると良い。

数値の目安としてはこのようになります。先ほど紹介した計算式の例ではMagic Numberが2となっていましたが、実際には2になる前に営業・マーケティングに投資して、新規顧客獲得のための施策を実行すべきです。

 

あまり数値が高すぎても、営業・マーケティングにかけるコストが低いということになるので、1前後を保てるようにすると良いでしょう。

 

逆に0.75以下は数値が低いため、営業・マーケティングのプロセスを見直す必要があります。特に、0.5以下の数値が出ている場合には迅速に対応してください。このように、Magic Numberの数値を元に、営業・マーケティングの戦略を立案できるのです。

SaaSビジネスにかかるコストはMagic Numberだけでは判断できない

ここまで、SaaSビジネスにおけるMagic Numberの重要性や計算方法などを解説しましたが、SaaSビジネスにかかるコストはMagic Numberだけでは判断できません。

 

もちろんMagic Numberは大切な指標ですが、SaaSビジネスには営業・マーケティング以外にもさまざまなコストがかかります。開発や運用などのコストにも注目しなければサービスを持続させるのは難しいので、Magic Numberだけに注目していれば良いというわけではありません。

 

SaaSビジネスを成長させていくためには、さまざまな指標に注目しながら、その場その場で適切な判断を行う必要があります。

SaaSビジネスで重要なSaaS Magic Number以外の指標

ここでは、SaaSビジネスを成長させていくために確認すべき指標を紹介していきます。Magic Number以外に注目すべき指標としては、主に下記の5つが挙げられます。それぞれどのような指標なのか見ていきましょう。

 

  • SaaS Quick Ratio
  • Churn Rate
  • Gross Margin
  • CAC Payback Period
  • バーンレート(資金燃焼率)

 

KPIの設定などにお悩みの方も、ぜひ参考にしてみてください。

SaaS Quick Ratio

SaaSにおけるQuick Ratioとは、ビジネスが効率的かつ健全に成長しているかどうかを示す指標です。一定の期間で獲得したMRRと、同期間に失ったMRRの比率を把握することで、新規顧客に依存しすぎていないかなどを判断できます。

 

新規顧客の獲得は既存顧客の維持よりもコストがかかるため、新規顧客に依存しすぎているといずれビジネスの成長が止まってしまう可能性が高いです。自社がそういった状態になっていないかを把握するために、SaaS Quick Ratioをチェックすることが大切といえます。

 

SaaS Quick Ratioは、「SaaSの主要KPI【Quick ratio】」の記事でより深掘りして解説しています。

Churn Rate

Churn Rate(チャーンレート)は、解約率を意味する言葉です。冒頭で説明したように、SaaSはサブスクリプション型のビジネスなので、長期的にサービスを使ってもらうことで顧客獲得コストなどを回収します。そのため、どれだけ長期的にサービスを利用してもらうかが重要なのです。

 

安定した収益を得るためにも、Churn Rateをできるだけ低くして顧客に長く使ってもらうための施策を立案して実行することが大切といえます。

 

Churn Rateには、顧客ベースの解約率を表すCustomer Churn Rate(カスタマーチャーンレート)と収益ベースの解約率を表すRevenue Churn Rate(レベニューチャーンレート)があります。どちらをKPIに設定するのが良いのかは、事業内容などに応じて変わるので、自社サービスの内容などに合わせて検討してみてください。

 

Churn Rateについては、「SaaSの主要KPI【チャーンレート】とは?種類や目安を解説」でより詳しく紹介しています。

Gross Margin

Gross Marginは、日本語でいうと粗利益のことです。粗利益とは、売上から売上原価や製造原価を差し引いた後に残る利益を指します。粗利益の割合が高いと、それだけビジネスの成長のためにお金をかけられるということなので、企業の成長率アップのためにも重要な指標です。

 

粗利率とは、計算方法や注意点、粗利を増やす方法などをまとめて解説」の記事で粗利率について紹介しているので、ぜひそちらも参考にしてみてください。

CAC Payback Period

CAC Payback Periodは、顧客獲得単価を回収する期間を指します。顧客獲得コストを表すCACを利益で回収するまでにはどのくらいの期間が必要なのかを把握するための指標です。

 

冒頭で、顧客獲得のために必要なコストが高くなると、その分を回収するまでに時間がかかると解説しましたが、その期間を知るためにCAC Payback Periodが役立ちます。

 

CAC Payback Periodについては、「SaaSの主要KPI【CAC Payback Period】」の記事でも詳しく解説しています。

バーンレート(資金燃焼率)

バーンレートは資金燃焼率のことで、企業が1ヶ月にどれだけコストを費やしているのかを示す指標です。バーンレートを把握しておくことで、資金不足に陥るタイミングや事業を拡大する時期の予測が可能になります。ベンチャーやスタートアップ企業で特に用いられる指標です。

 

バーンレートには、企業が1ヶ月に使った現金の合計を表すグロスバーンレートと、グロスバーンレートから収入を引いたコストを表すネットバーンレートがあります。一般的に、企業の資金余力を見積もるときに利用されるのはネットバーンレートですが、ネットバーンレートを知るためにはグロスバーンレートを知っておく必要があるので、どちらも把握しておくことが大切です。

 

バーンレートについてもっと知りたいという方は、「【スタートアップ企業必見】バーンレートとは?計算方法や注意点を解説」をご参照ください。

まとめ

SaaS Magic Numberは、営業やマーケティングにかかるコストに対しての販売効率を表します。企業の成長度合いや企業が効率的に営業を進められているのかなどを判断する際に役立つ指標です。

 

しかし、SaaSはMagic Numberだけに注目していれば良いというわけではありません。その他の指標にも注目しながら、適切な判断を行っていく必要があります。SaaS企業が見るべき指標をさらに詳しく知りたい方は、下記の資料も参考にしてみてください。

監修者

広瀬好伸
株式会社ビーワンカレッジ 代表取締役社長

プロフィール

京都大学経済学部卒、あずさ監査法⼈にてIPO準備や銀⾏監査に従事。
起業後、公認会計⼠・税理⼠として、上場企業役員、IPO、M&A、企業再⽣、社外CFOなどを通じて600社以上の事業に関わる。

公認会計士、 IPOコンサルタント、社外役員として計4度の上場を経験。
株式会社i-plug社外役員、株式会社NATTY SWANKY社外役員。

成長スピードの早い企業におけるKPIマネジメントやファイナンス、上場準備や上場後の予算管理精度の高度化といった経験を踏まえ、KPIのスペシャリストとして、日本初のKPIマネジメント特化SaaS「Scale Cloud」の開発・提供やコンサルティングに注力。
従来のマネジメント手法を飛躍的に進化させ、企業の事業拡大に貢献中。

講演実績

株式会社セールスフォース・ドットコム、株式会社ストライク、株式会社プロネクサス、株式会社i-plug、株式会社識学、株式会社ZUU、株式会社あしたのチーム、ジャフコグループ株式会社、トビラシステムズ株式会社、株式会社琉球アスティーダスポーツクラブなどの主催セミナー、日本スタートアップ支援協会などの経営者団体、HRカンファレンスなどのカンファレンス、関西フューチャーサミットなどのスタートアップイベントなどにおける講演やピッチも実績多数。

論文

『経営指標とKPI の融合による意思決定と行動の全体最適化』(人工知能学会 知識流通ネットワーク研究会)

特許

「組織の経営指標情報を、経営判断に関する項目に細分化し、項目同士の関連性を見つけて順位付けし、経営に重要な項目を見つけ出せる経営支援システム」(特許第6842627号)

アクセラレーションプログラム

OIH(大阪イノベーションハブ)を拠点として、有限責任監査法人トーマツ大阪事務所が運営するシードアクセラレーションプログラム「OSAP」採択。

取材実績

日本経済新聞、日経産業新聞、フジサンケイビジネスアイ、週刊ダイヤモンド、Startup Times、KANSAI STARTUP NEWSなど。

著書

『飲食店経営成功バイブル 1店舗から多店舗展開 23の失敗事例から学ぶ「お金」の壁の乗り越え方』(合同フォレスト)

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