ストック型ビジネスとフロー型ビジネスの違いを実例と合わせて解説

2022.04.10
ストック型ビジネスとフロー型ビジネスの違いを実例と合わせて解説

ビジネスモデルには、「ストック型」と「フロー型」の2つのタイプが存在することをご存じでしょうか。「名前を聞いたことはあるが、どのような違いがあるのかを具体的に知らない」という方もいるでしょう。

 

この記事では、ストック型ビジネスとフロー型ビジネスの違いやメリット・デメリットを紹介していきます。具体的な事例を踏まえて詳しく解説していくので、これから新しくビジネスを始めたいという方は、ぜひ記事をご覧ください。

ストック型ビジネスとフロー型ビジネスって何?

従来のビジネスモデルは、売り切り型で自社の売上・収益を拡大するのが一般的でした。しかし、近年ではSaaSやサブスクリプションが流行し、ユーザーが月額一定料金を払い続けることで売上・収益を安定確保するビジネスモデルが注目されています。

 

月額で利用するタイプのビジネスモデルが注目を集める背景としては、新型コロナウイルス感染拡大による人々の生活スタイルの変化や、働き方改革などの影響による企業の営業スタイルの変化などがあるでしょう。

 

こういった新しいビジネスの概念をストック型ビジネス、従来の売り切り型をフロー型ビジネスといいます。それぞれ詳しく解説していくので、見ていきましょう。

ストック型ビジネスとは

ストック型ビジネスは、顧客が一定料金を払い続けることによって、継続的にプロダクトを利用する仕組みを構築し、企業が安定的な売上・収益を確保できるビジネスモデルです。顧客は、プロダクトを利用する権利を買っていると考えると分かりやすいでしょう。こういった考え方は、ユーザーにプロダクトを利用する敷居を低く感じさせます。

 

このビジネスモデルでプロダクトを提供している例として、音楽や動画などのストリーミング配信サービスや、会計ソフトなどのビジネスツールが挙げられます。こういったサービスをサブスクリプションといい、ストック型ビジネスの1つとして近年注目されているのです。

サブスクリプションもストック型ビジネスの1つ

前述の通り、サブスクリプションはストック型ビジネスの一部ですが、定義としての捉え方が若干異なります。ストック型ビジネスは機能全体に対する収益継続型ビジネスですが、サブスクリプションは限定的・具体的な機能やサービスに対する定額課金型ビジネスと言い換えることができます。

 

フロー型ビジネスとは

一方、プロダクトを一度限りで売り切ることをゴールとしているビジネスをフロー型ビジネスといいます。これまで一般的だったビジネスモデルで、ユーザーのニーズや課題に応じてその都度契約、プロダクトを提供します。収益継続性は低いですが、短期的に大きな売上・収益の獲得につながることが大きな特徴です。

ストック型ビジネスのメリット

ストック型ビジネスは、提供するプロダクトや業務形態に応じて収益継続性のレベルを測る必要があります。メリット・デメリットの把握がビジネスの成功・成長を大きく左右するでしょう。ここでは、ストック型ビジネスのメリットについて詳しく紹介します。

 

ストック型ビジネスには、主に以下の3つのメリットがあります。

 

  • 継続的に安定した売上、収益が見込める
  • 積極的な営業活動が必要ない
  • 外的要因が売上、収益に影響をもたらしにくい

 

それぞれ詳しく見ていきましょう。

継続的に安定した売上、収益が見込める

ストック型ビジネスは、ユーザーが自社プロダクトを継続的に利用する仕組みを構築しているため、安定した売上や収益が見込めます。さらに、カスタマーサクセスを導入すれば、顧客のニーズやプロダクトの課題を早期発見でき、ニーズに応えるバージョンアップや改善策の実施がユーザーの解約防止につながるでしょう。

 

また、ユーザーが頻繁に使う機能やプロダクトのログイン頻度を分析することで、適切なアップセル・クロスセルを提案し、さらなる売上・収益向上が期待できます。

積極的な営業活動が必要ない

前項で記載したカスタマーサクセスの導入により、積極的な営業活動が不要になります。また、ストック型ビジネスの1つであるサブスクリプションやSaaS型ビジネスでは、PLGという営業・成長戦略を取っていることも営業活動が不要になる要因です。

 

PLGはプロダクトの中に一連の営業フローが含まれており、プロダクトがプロダクトに価値を付けるという特徴があります。それによって特別な営業活動をしなくても、ユーザーが1度プロダクトを利用するだけで、継続的な売上・収益獲得の向上が期待できるのです。

 

PLGについて詳しく知りたいという方は、「PLG(プロダクトレッドグロース)とは|事例やメリットを解説」の記事をご参照ください。

外的要因が売上、収益に影響をもたらしにくい

売り切り型の場合、新規ユーザーを獲得するのが難しい外的要因に晒されたときに売上や収益に悪い影響を与えますが、ストック型にはこういった心配がほとんどありません。具体的には、ここ数年の新型コロナウイルス流行で、経営難や倒産に追い込まれる企業が増えています。

 

しかし、ストック型ビジネスはすでにプロダクトを利用しているユーザーが継続的に利用しているため、売上や収益を維持しやすいのです。逆に、生活様式の変化や企業における営業スタイルの変化が、ストック型ビジネスを伸ばしている傾向にあります。

ストック型ビジネスのデメリット

ストック型ビジネスは多くのメリットがある一方で、以下のようなデメリットも存在します。

 

  • 売上、収益獲得までに時間がかかる
  • ある程度の初期投資が必要

 

デメリットも紹介するので、参考にしてみてください。

売上、収益獲得までに時間がかかる

プロダクトの継続利用やリピートを狙うためには、ある程度のコストがかかります。ストック型ビジネスはユーザー数の増加にともなってコストを回収する形になりますが、これには時間がかかってしまうので、売上や収益がプラスになるまでは時間がかかるでしょう。

ある程度の初期投資が必要

ストック型ビジネスを成功させるためには、カスタマーサクセスの導入、継続的に利用されるプロダクトの開発などの初期投資が必要になります。仕組みの構築やインフラの導線を設置するにはかなりの資金を費やすため、ストック型ビジネスの走り出しには、ある程度コストがかかることは避けられません。

フロー型ビジネスのメリット

フロー型ビジネスには、ストック型ビジネスと異なるメリット・デメリットが存在します。まずはメリットについて詳しく見ていきましょう。

 

  • 短期間で売上、収益の向上が見込める
  • 外的要因によって大きく売上、収益が向上する可能性がある

 

それぞれ詳しく解説していきます。

短期間での売上、収益の向上が見込める

うまくユーザーを集められれば、短期間で売上・収益の向上が見込めるというのが、フロー型ビジネスの大きなメリットです。例えば、新しいプロダクトを売り出す際にイベントを開催する、新店舗の設置するといった施策を行えば、ある程度の注目を集めるため、ユーザーが集中しやすいでしょう。莫大な初期投資がかかってもスタートが好調であれば、短期間での回収が見込めます。

外的要因によって大きく売上、収益が向上する可能性がある

フロー型ビジネスは外的要因の変化が大きく影響します。例えば、競合サービスの終了、ライバル店の閉店などの理由で、一気にユーザーが流れてくる可能性があります。

 

また、最近ではSNSも売上や収益を向上させる武器になっています。自社からの情報発信はもちろんですが、芸能人やインフルエンサーの投稿による自社プロダクトの宣伝は大きな反響が期待できるでしょう。しかし、こういった情報発信は悪い影響を与えることもあるので、注意が必要です。

フロー型ビジネスのデメリット

フロー型ビジネスの特徴である、収益向上性の低さは以下のようなデメリットをもたらします。

 

  • 安定的に売上や収益を上げることができない
  • 顧客獲得のための継続的な営業活動が必須

 

デメリットについても詳しく見ていきましょう。

安定的に売上や収益を上げることができない

売り切り、単発購入のプロダクトは収益の向上性がないため、常に新規顧客を追う必要があります。「先月は複数の新規顧客が獲得できたが、今月は新規獲得数が0だった」ということも珍しくなく、先月と今月で売上・収益に大きな差が発生してしまう不安定な状態になるリスクが常に付きまといます。

 

また、「フロー型ビジネスのメリット」で説明した外的要因は、デメリットになるケースもあります。自社にとって利益をもたらす場合はメリットですが、外的要因によって売上・利益の減少による経営難や倒産などの悪影響をもたらす危険性もあるのです。外的要因の発生は予測が難しいため、これも不安定な売上・収益の要因になるでしょう。

顧客獲得のための継続的な営業活動が必須

フロー型ビジネスで常にユーザー数を伸ばし続けるためには、継続的な営業活動が必須です。プロダクトに初めて触れる新規顧客獲得を目的とした営業活動と、プロダクトをリピートしてもらうための営業活動を同時に行わなければいけません。単発購入ばかりで長期的な関係を構築している顧客が少ないと、安定した売上・収益の見込みが立たず、いつまでも不安定な状態が続いてしまいます。

ストック型ビジネスの事例

ストック型ビジネスにはさまざまな種類があるため、ここではストック型ビジネスの事例を紹介していきます。これはあくまで一例ですが、これから新しくストック型ビジネスを始めたいという方などは、ぜひ参考にしてみてください。

 

  • 定期購入型
  • 賃貸型
  • SaaS型
  • 保険型
  • 教室型
  • サービス型

 

それぞれの事例を見ていきましょう。

定期購入型

「いつも同じお店、商品を利用する」「購入頻度が高いからできるだけ安く定期的に購入したい」などのニーズに応えるのが定期購入型です。スーパーの食材配達や通販事業で導入されていることが多いストック型で、身近なものだと新聞や雑誌の定期購読がこれに該当します。

賃貸型

アパートやマンションへの居住を希望する人、オフィスを借りたい企業のニーズに応えるのが賃貸型です。戸建てやマンションを所有している人でも、収納スペースとしての賃貸倉庫契約も一般的になりつつあります。その他にも、単身赴任で短期間の居住空間を確保したい、大型会議やイベントで広いスペースが必要など、さまざまなニーズに対応しています。

 

SaaS型

企業の業務効率化を図るクラウドサービス、ノウハウなどの無形資産を定額利用することなどがSaaS型に該当します。近年では国内でSaaSが急速に浸透しており、急成長しているベンチャーやスタートアップ企業の多くがSaaS型ビジネスを行っています。これを背景に、ストック型ビジネスの中でもSaaS型は注目度が高く、今後さらなる普及が想定されます。

保険型

保険型は誰もが必ず利用しているストック型です。車を所有している人であれば車両保険、もしものときの備えとしての生命保険や医療保険の契約などが該当します。高額請求の発生を防止する役割があります。

教室型

教室型は習い事の月謝をイメージすると良いでしょう。直接指導を希望する対面の習い事、スクールはもちろんですが、最近は時間がない人に向けてWEB上で講座や授業を受講するタイプも人気です。子供が通う学習塾などは対面で行うのが一般的でしたが、現在では新型コロナウイルスの感染拡大防止として、WEB上で授業を行う学習塾も少なくありません。

サービス型

「利用数にばらつきがあるが、費用を抑えて継続的に利用したい」というニーズに応えるのがサービス型です。転職サイト・コンサルタントの利用料金などがこれに該当します。最近では、脱毛や歯医者でも定額利用プランが用意されている傾向です。また、人件費がかかるビジネスモデルでも効果的な活用が可能です。

フロー型ビジネスの事例

コンビニや飲食店、美容室などの店頭で商品やサービスの提供を行うのがフロー型ビジネスです。ユーザーが増えるたびに売上や収益は伸びていきますが、「フロー型ビジネスのデメリット」でも説明したように、安定的な売上や収益の確保、新規顧客獲得に課題があります。

 

例えば、好立地な場所に美容室をオープンして、顧客の口コミやSNSの投稿で集客を狙ったとします。一度話題になればしばらく顧客は絶えませんが、話題性がなくなった途端に売上や収益は落ちてしまうでしょう。そういったことを防ぐために、独自のサービスや認知度を向上させる活動を通して、長期的に顧客が集まるように工夫する必要があります。フロー型ビジネスでは、リピーターや新規顧客の呼び込みが非常に重要です。

まとめ

ここまでストック型ビジネスとフロー型ビジネスの違いについて、メリット・デメリット、具体的な事例を踏まえて説明してきました。取り組んでいるビジネスによってどちらのタイプを取れば安定するか、見極めることが大切です。

 

しかし、社会情勢やそれにともなう企業スタイルの変化を見ると、これからは売り切りのフロー型ビジネスではなく、収益継続性の高いストック型ビジネスがさらなる注目を集めるといえるでしょう。

 

ストック型ビジネスをこれから始めたいという方は、ぜひ下記の資料もご参照ください。

 

監修者

広瀬好伸
株式会社ビーワンカレッジ 代表取締役社長

プロフィール

京都大学経済学部卒、あずさ監査法⼈にてIPO準備や銀⾏監査に従事。
起業後、公認会計⼠・税理⼠として、上場企業役員、IPO、M&A、企業再⽣、社外CFOなどを通じて600社以上の事業に関わる。

公認会計士、 IPOコンサルタント、社外役員として計4度の上場を経験。
株式会社i-plug社外役員、株式会社NATTY SWANKY社外役員。

成長スピードの早い企業におけるKPIマネジメントやファイナンス、上場準備や上場後の予算管理精度の高度化といった経験を踏まえ、KPIのスペシャリストとして、日本初のKPIマネジメント特化SaaS「Scale Cloud」の開発・提供やコンサルティングに注力。
従来のマネジメント手法を飛躍的に進化させ、企業の事業拡大に貢献中。

講演実績

株式会社セールスフォース・ドットコム、株式会社ストライク、株式会社プロネクサス、株式会社i-plug、株式会社識学、株式会社ZUU、株式会社あしたのチーム、ジャフコグループ株式会社、トビラシステムズ株式会社、株式会社琉球アスティーダスポーツクラブなどの主催セミナー、日本スタートアップ支援協会などの経営者団体、HRカンファレンスなどのカンファレンス、関西フューチャーサミットなどのスタートアップイベントなどにおける講演やピッチも実績多数。

論文

『経営指標とKPI の融合による意思決定と行動の全体最適化』(人工知能学会 知識流通ネットワーク研究会)

特許

「組織の経営指標情報を、経営判断に関する項目に細分化し、項目同士の関連性を見つけて順位付けし、経営に重要な項目を見つけ出せる経営支援システム」(特許第6842627号)

アクセラレーションプログラム

OIH(大阪イノベーションハブ)を拠点として、有限責任監査法人トーマツ大阪事務所が運営するシードアクセラレーションプログラム「OSAP」採択。

取材実績

日本経済新聞、日経産業新聞、フジサンケイビジネスアイ、週刊ダイヤモンド、Startup Times、KANSAI STARTUP NEWSなど。

著書

『飲食店経営成功バイブル 1店舗から多店舗展開 23の失敗事例から学ぶ「お金」の壁の乗り越え方』(合同フォレスト)

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