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時価総額1,500億円の大型上場!ビズリーチのKPIはどうなっている?

2021.04.22
時価総額1,500億円の大型上場!ビズリーチのKPIはどうなっている?

ビジョナルの主たる事業と業績は?

転職サイト「ビズリーチ」を展開するビジョナルが3月17日、東証マザーズへの新規上場を承認されました。

企業が人材に直接アプローチする「ダイレクトソーシング」を持ち込んだのがビズリーチで、そういった採用活動を「ダイレクトリクルーティング」と命名し、商標登録もしています。

出典:https://tinyurl.com/yjhcbpcc

2020年7月期の売上は258.8億円で前期比+20%、営業利益は21.9億円で前期比+325%と着実に売上を伸ばしています。

しかし、売上の成長率をみると、2017年7月期の61%から2020年7月期は20%と、成長率は年々鈍化しているようです。

ここで、もう少し深掘りするために、セグメントごとの状況をみてみましょう。

 

出典:https://f.irbank.net/pdf/E36484/etc/S100KZ7Y.pdf

 

ビジョナルの事業は大きく「HR Techセグメント」と「Incubationセグメント」の2つがあります。

主要事業は「HR Techセグメント」であり、同セグメントは、さらに「ビズリーチ事業」と「HRMOS事業」の2つがあります。中でもビズリーチ事業は直近の決算で売上の85%以上を占めています。

 

Incubationセグメントは、事業承継M&Aプラットフォーム「ビズリーチ・サクシード」や物流DXプラットフォーム「トラボックス」などで、HR領域に限らず事業を展開しており、今後もプラットフォーマーとしてのポジショニングと幅広い領域における新規事業創出を経営方針として打ち出しています。

 

ここでは、主要事業のビズリーチ事業と、HRMOS事業について掘り下げてみたいと思います。

 

ドル箱「ビズリーチ事業」は成長鈍化!?

ビズリーチ事業は、①求職者、②求人企業、③ヘッドハンター(人材紹介会社)の3者が集ま李、求人企業やヘッドハンターが求職者に直接アプローチできる日本最大級のダイレクトリクルーティングプラットフォームです。

求職者にとっては、求人企業とヘッドハンターの両方からスカウトがくるので、就職先の選択肢が広がりやすくなるというメリットがありますね。

そのメリットもあってか、登録する求職者の人数が増えていき、その結果、求人企業とヘッドハンターも増えていくという、好循環を生み出しているようです。

出典:https://strainer.jp/notes/5408#_=_

 

まず驚くのは、その収益性の高さです。

2020年7月期における売上209億円に対して、営業利益は92億円。管理部門経費配賦前の数値ではありますが、その利益率は44%と極めて高い水準です。

しかし、気になるのはその成長性です。

2020年7月期第2四半期の売上102億円に対して、2021年第2四半期の売上101億円と、前年同期比で減収しています。

利益率については高水準を維持していますが、営業利益も2020年7月期第2四半期の40億円に対して、2021年7月期第2四半期の42億円と、微増にとどまっています。

2021年7月期はコロナの影響を受けているため、前年同期と単純に比較はできないものの、気になるところではありますね。

もう少し細かくみてみましょう。

 

出典:https://f.irbank.net/pdf/E36484/etc/S100KZ7Y.pdf

これはビズリーチ事業の社内指標としてあげられている4つの項目です。

累計導入企業数、年次利用中企業数、利用ヘッドハンター数、スカウト可能会員数があげられていますね。

 

出典:https://strainer.jp/notes/5408#_=_

2021年7月期第2四半期において、累計利用企業数は15,500社以上となっています。

2020年7月期時点では13,800社以上で、そのうち6,600社以上が利用中企業でした。

2021年7月期第2四半期の利用中企業数が開示されていないことが少し気になりますが、累計導入企業数と、そのうち利用中企業数は増加傾向であることがうかがえます。

 

出典:https://strainer.jp/notes/5408#_=_

 

スカウト可能会員数も直近で123万人以上となっており、この数がまさにビズリーチ事業の価値の源泉になっていることは間違いないでしょう。

4つの主要KPIのうち3つは以上のように増加傾向ですが、利用ヘッドハンター数は直近では横ばいとなっています。

さて、累計導入企業数が増えたとしても、実際の利用中企業数が増えないと実際には利用されていない、ということにもなりかねないので、この利用中企業数と売上の推移と、1社あたり売上についてみてみましょう。

 

前述した通り、売上の成長率は鈍化しており、その要因として、利用中企業の成長率が鈍化していることがあげられそうです。

しかし、成長率は鈍化しているといえども、1社あたり売上が増加しているということは、プラットフォームとしての価値が向上しているのでしょう。その要因として、先程のスカウト可能会員数の増加があげられそうです。

 

HRMOS事業の成長性

次は、2016年から開始した人材採用クラウド「HRMOS」についてです。

出典:https://f.irbank.net/pdf/E36484/etc/S100KZ7Y.pdf

 

この図の通り、2021年7月期第2四半期におけるARRは11.3億円となり、前年同期比+18%となっています。

2021年7月期第1四半期におけるARRは10.9億円で、前年同期比+27%であったことと比べると鈍化しているようにも見えます。

ここでチャーンレートをみてみましょう。

 

出典:https://f.irbank.net/pdf/E36484/etc/S100KZ7Y.pdf

 

チャーンレートはおおよそ1%前後で安定的に推移してきましたが、2021年7月期になって一気に上昇しています。

もう少し詳しくみるため、単月でのチャーンレートをみてみましょう。

 

出典:https://f.irbank.net/pdf/E36484/etc/S100KZ7Y.pdf

単月チャーンレートは2020年6月には2.16%に拡大しています。

その要因の一つは新型コロナ拡大に伴う影響でしょう。

しかし、その後は落ち着きを見せ、2021年1月は0.76%まで改善しています。

ARRの成長率の鈍化は、このチャーンレートの一時的(?)な上昇による影響が大きそうですね。

では次に、ARRの構成要素である、有料課金ユーザー数(利用中企業数)とARPUについてみてみましょう。

 

出典:https://strainer.jp/notes/5408#_=_

 

2021年7月期第2四半期における有料課金ユーザー数は849社となっており、前述の通り、チャーンレートが上昇したことで、その成長はやや落ち着いているように見えます。

一方、ユーザーあたりの単価(ARPU)は11.1万円と拡大傾向です。

KPIには大きく分けて資本のKPIと効率のKPIがあります。

資本のKPIは、「そのKPIが増えていくと、それに伴ってコストが増えていくKPI」です。例えば、リスティング広告のクリック数、テレアポ数、商談数などです。いずれもそれらのKPIが増えれば増えるほど、それに伴って広告費や人件費が増えていきます。

一方、効率のKPIは、それとは逆で「そのKPIが増えても、それに伴ってコストが増えていかない(いきづらい)KPI」です。例えば、リスティング広告のCVR、テレアポのアポ率、商談における成約率などです。いずれもそれらのKPIが上昇しても、それに伴って広告費や人件費は増えていきません。

 

どちらがいいという話ではなくどちらも重要ですが、HRMOS事業の例で言えば、資本のKPIである有料課金ユーザー数の成長が鈍化していたとしても、効率のKPIであるARPUが着実に増えていっているので、サービスの付加価値としては高まっているのではないかと思います。

 

数を追うべき時なのか、効率を追うべき時なのか。

2つのKPIの違いを考えながらマネジメントしてみてはどうでしょうか。

KPIマネジメントの際に役立つ、「SaaSにおけるKPIツリーの作り方」も資料にまとめてあります。

ぜひ参考にしてみてください。

執筆者

広瀬好伸
株式会社ビーワンカレッジ 代表取締役社長

プロフィール

京都大学経済学部卒、あずさ監査法⼈にてIPO準備や銀⾏監査に従事。
起業後、公認会計⼠・税理⼠として、上場企業役員、IPO、M&A、企業再⽣、社外CFOなどを通じて600社以上の事業に関わる。

公認会計士、 IPOコンサルタント、社外役員として計4度の上場を経験。
株式会社i-plug社外役員、株式会社NATTY SWANKY社外役員。

成長スピードの早い企業におけるKPIマネジメントやファイナンス、上場準備や上場後の予算管理精度の高度化といった経験を踏まえ、KPIのスペシャリストとして、日本初のKPIマネジメント特化SaaS「Scale Cloud」の開発・提供やコンサルティングに注力。
従来のマネジメント手法を飛躍的に進化させ、企業の事業拡大に貢献中。

講演実績

株式会社セールスフォース・ドットコム、株式会社ストライク、株式会社プロネクサス、株式会社i-plug、株式会社識学、株式会社ZUU、株式会社あしたのチーム、ジャフコグループ株式会社、トビラシステムズ株式会社、株式会社琉球アスティーダスポーツクラブなどの主催セミナー、日本スタートアップ支援協会などの経営者団体、HRカンファレンスなどのカンファレンス、関西フューチャーサミットなどのスタートアップイベントなどにおける講演やピッチも実績多数。

論文

『経営指標とKPI の融合による意思決定と行動の全体最適化』(人工知能学会 知識流通ネットワーク研究会)

特許

「組織の経営指標情報を、経営判断に関する項目に細分化し、項目同士の関連性を見つけて順位付けし、経営に重要な項目を見つけ出せる経営支援システム」(特許第6842627号)

アクセラレーションプログラム

OIH(大阪イノベーションハブ)を拠点として、有限責任監査法人トーマツ大阪事務所が運営するシードアクセラレーションプログラム「OSAP」採択。

取材実績

日本経済新聞、日経産業新聞、フジサンケイビジネスアイ、週刊ダイヤモンド、Startup Times、KANSAI STARTUP NEWSなど。

著書

『飲食店経営成功バイブル 1店舗から多店舗展開 23の失敗事例から学ぶ「お金」の壁の乗り越え方』(合同フォレスト)

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